中国内陸部で、ミャンマーとの国境にも近い雲南省騰衝市のホテルが日本人であることを理由に宿泊を拒否したとされる動画がSNS（ネット交流サービス）上で拡散して話題になっている。同市は日中戦争で激しい戦闘が交わされた歴史を持つ。SNSでは「愛国的行動だ」「よくやった」などと支持する声が目立ち、反日世論の根深さが浮き彫りになった。
動画などによると、11月上旬、中国人が日本人を連れてホテルにチェックインしようとしたところ、ホテル従業員が「日本人は宿泊できない」と拒否して口論になり、従業員が館内警報を鳴らす事態になった。この騒動が起きた後、ホテルには花束やプレゼントが多数届けられたという。
一方で、SNS上では、過激な「反日」投稿に対し「偽の『愛国』で全く無意味だ」「歴史を忘れないのは、恨みを持ち続けることではないはずだ」などと否定的な意見も寄せられていた。
中国では、地方を中心に中小の宿泊施設が「外国人を受け入れる資格がない」と日本人に限らず宿泊を断るケースがある。大手宿泊予約サイトを見ると、問題のホテルも宿泊規定の欄に、同様の注意書きをしていた。
ただ、こうした措置は現在は法的根拠に乏しく、外国からの投資や観光客の誘致に力を入れる政府の方針とも矛盾する。中国商務省などは7月、地方当局や宿泊業者に対し、法令に違反して外国人の宿泊を制限したり、拒否したりしないよう通知を出していた。【北京・河津啓介】
