東欧の旧ソ連構成国モルドバで3日、大統領選(任期4年)の決選投票が行われ、即日開票された。親欧米派の現職サンドゥ氏が親露派候補を破り、当選が確実な情勢となった。10月にあった欧州連合(EU)加盟への賛否を問う国民投票に続いて親欧米路線が支持された形で、影響力を保ちたいロシアと現政権を支持する欧米の対立も激しくなると予想される。
中央選管によると、現地4日未明時点で開票率は98%以上で、サンドゥ氏は親露派政党の後押しを受けるストイアノグロ元検事総長に9ポイント以上の差を付けている。暫定投票率は約54%。サンドゥ氏はX(ツイッター)に「私たちは団結、民主主義、そして尊厳ある未来への決意の強さを共に示した」と投稿した。
モルドバは10月20日にEU加盟の是非を問う国民投票を行い、僅差で加盟が支持された。同時に行われた大統領選では、サンドゥ氏は首位になったものの過半数は確保できず、次点のストイアノグロ氏との決選投票に進んだ。
2020年に発足したサンドゥ政権はロシアがウクライナに侵攻した直後の22年3月にEU加盟を申請。その後も親欧米路線を加速させていた。ストイアノグロ氏は、EUへの加盟自体は目指すものの、ロシアとの関係修復にも意欲を見せていた。
モルドバはウクライナとの国境沿いに親露派勢力が実効支配する未承認国家を抱える地政学上の要衝。ロシアが国民投票と大統領選に買収や偽情報の拡散で介入した疑いが持たれている一方で、欧米は経済支援を強化して対抗していた。
10月の投票について、サンドゥ氏はロシア側が人口の1割を超える30万人を買収しようとしたと非難していた。決選投票でも組織的な大規模動員などが疑われている。2期目に入ってもサンドゥ政権とロシアとの対立は先鋭化しそうだ。
これで親欧米派は国民投票と大統領選のいずれも制したことになるが、親欧米派の支持者が多い国外からの投票の貢献が大きかった。物価高などで地方を中心に現政権への不満を持つ有権者もおり、来夏に予定される議会選挙で与党が過半数を維持できるかが次の焦点となる。【ブリュッセル岡大介】