秋田県知事の4期目の任期満了(2025年4月19日)まで残り半年を切った佐竹敬久知事(76)は毎日新聞のインタビューに応じ、知事としての自身の仕事を振り返り、「70点」と自己評価した。後任の知事には「政党に縛られず、特定の人物の意向に沿うのではなく、県民のために力を尽くしてほしい」と期待を示した。【山本佳世子、高橋宗男、工藤哲】
インタビューでの主なやりとりは次の通り。
――知事としての任期を振り返って。
◆本当に平穏な日々はなかった。就任した時期(2009年4月)にはリーマン・ショックの影響で県内産業も影響を受け、財政的にも厳しかった。その後東日本大震災(11年3月)が発生し、4、5年ほど観光にも影響した。また豪雪被害に加えコロナ禍、近年の水害対応もあり、大変な出来事が続いた。
これに加えて県内の65歳以上の割合を示す高齢化率は年々上昇し、人口は就任時期(約109万人)から約20万人近く減った。さらに高速道路の整備も道半ばで、こうした中でいかにバランスを取りながら県政を前進させるかをずっと考えてきた。
――任期の取り組みについて自己評価すると何点か。
◆70点くらいだと思う。知事としては秋田が持つ強み、つまり豊かな食と自然エネルギー、また水や森林、これをどう生かすかを考えてきた。秋田沖の洋上風力発電の本格稼働を後押しし、また米依存の農業から果樹や野菜、花などにも広げることも意識してきた。
いろいろ取り組んだが、議会との調整も大事だった。対立ばかりでは積み上げてきたものが無駄になる。削ったり、大きく変えたりすることばかりが改革とは考えず「円満に自分の意志を通す」ことを意識してきた。
――愛媛県の特産品「じゃこ天」を「貧乏くさい」などと発言し、その後謝罪した。他にもいくつかの発言が批判されたが、改めて真意は。
◆完全に私が悪かった。表現が中途半端で、乱暴な言葉を使ってしまった。思いついたらぱっと発言してしまうことが私の一番の欠点。私の分まで謝っていただいた県民には本当に感謝している。
――人口減少と同時に、東京一極集中をどう見るか。
◆これまで国は東京に機能を集中させ、その結果、大きな経済、地域、賃金の格差をもたらした。地方の価値を国が無視してきた結果だ。
富士山の噴火や首都直下地震などがもし起きれば東京は大変なことになる。こうした有事に備え、地方の価値を改めて見直し、企業や中央の機能を分散させていくことで地方は十分活性化できる。地方創生で交付金を倍にしても意味がない。変な箱物を作るのは無駄遣いだ。地方の良い企業をもっと後押ししてほしい。
――次の知事に伝えたいことは。
◆人口減少が今後も進む中で、いかに男女や年齢構成のバランスを取っていくか。また少ない人口でいかに各地域を維持していくのか。この手腕が求められる。ふさわしいと考えた人がおり、何人か声をかけたがなかなか乗らなかった。個人的には特定の政党に縛られず、また特定の人物の影響力もない人の方がいいと思う。
――退任後の生活は。
◆機械や電動車の勉強をしたい。あと北極に近いアラスカの雄大さにも興味があるが、まずは健康をしっかり維持していきたい。
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次期知事選は2025年3月20日に告示、4月6日に投開票される。これまで正式な出馬表明はないが、自民党の鈴木健太県議(49)、会社経営の早川周作氏(47)、副知事の猿田和三氏(61)が立候補を検討している。
さたけ・のりひさ
秋田県旧角館町(現仙北市)出身。東北大工学部を卒業後、秋田県職員、秋田市長(2期)を経て県知事。旧秋田藩主・佐竹家の分家の佐竹北家の21代当主でもある。