2011年3月に起きた福島第1原発事故当時の東京電力(現東京電力ホールディングス)会長だった勝俣恒久(かつまた・つねひさ)さんが21日に亡くなった。84歳。葬儀は近親者で営んだ。東京電力ホールディングスが31日発表した。
東京都出身。1963年に東京大経済学部を卒業して東京電力に入社。副社長だった02年、福島第1原発1号機を巡るトラブル隠しで引責辞任した南直哉社長の後任に就任し、電力自由化が段階的に進む中、社内に競争意識を浸透させようと尽力。08年に会長に就いた。電気事業連合会会長や経団連副会長といった経済界の要職も歴任した。
福島第1原発事故では東日本大震災の津波で施設が全電源を失い、原子炉を冷却する機能を喪失。1、3、4号機の建屋内で水素爆発が起き、放射性物質が大気中に飛散した。国内最悪の原発事故に直面し、経営トップとして賠償や政府との調整など事故処理の陣頭指揮を執った。経営再建に向けて政府の公的資金受け入れを決めた12年6月の株主総会で会長を辞任した。
福島県の避難者らから12年に業務上過失致死傷容疑で告訴され、原発事故を巡り刑事責任も問われた。東京地検は不起訴としたが、検察審査会の起訴議決を経て16年に業務上過失致死傷罪で強制起訴。東京地裁は19年、津波による原発事故を予見することはできなかったとして無罪判決を言い渡した。
元丸紅社長の勝俣宣夫氏は実弟。