韓国の国家情報院は18日、ウクライナに侵攻するロシアを支援するため北朝鮮が最終的には1万人を超える大規模派兵を決定したとの見方を公表したが、これについて韓国の専門家は「北朝鮮の軍事力の強化や現代化につながり、韓国や日本にとっても脅威となる」と危機感を強めている。
国情院は北朝鮮の特殊部隊1500人あまりがロシア極東ウラジオストクに移動したのを確認したと発表したほか、ロシア空軍の大型輸送機がウラジオストクと平壌の間を頻繁に行き来しているとも指摘した。
ウクライナの戦略コミュニケーション・情報セキュリティーセンターは19日、派兵された北朝鮮兵士をロシアの訓練施設で撮影したものだとする映像をX(ツイッター)で公表。映像の真偽は不明だが、兵士が命令口調で話している言葉について韓国の聯合ニュースは「北朝鮮のアクセントだ」と指摘している。映像の中の兵士たちはロシアの軍服を着ていた。
北朝鮮は1960年代、ベトナム戦争にも小規模の空軍部隊を派兵しているが、1万人を超える規模の派兵が事実だとすれば、前例がない事態だとみられる。
考えられる北朝鮮側の狙いについて韓国国防研究院の杜真浩(トゥジンホ)国際戦略研究室長は「経済難を含め北朝鮮国内の状況が悪く、なんとか出口を探そうとする金正恩政権が、使える最後のカードを使った」と指摘。北朝鮮は米欧など西側の支援を受けたウクライナとの戦いを「米国や帝国主義との戦い」と位置づけており、参戦は体制結束に役立つと判断している可能性が高いと見る。
杜氏はまた北朝鮮がロシア支援の大きなカードを切ったことで、ロシアが弾道ミサイルや軍事偵察衛星の高度化に役立つ技術を北朝鮮に伝える可能性があるとも指摘する。さらに「(北朝鮮兵士が)戦闘体験を蓄積し、武器体系もロシア産に変えていくことで北朝鮮の軍事力の現代化が進めば、韓国にとっても日本にとっても脅威は大きくなる」と強調した。
一方、ロイター通信によるとウクライナのシビハ外相は19日、首都キーウ(キエフ)での記者会見で「北朝鮮軍の介入は戦闘激化のリスクだ」と訴えた。
ただ、米ホワイトハウスの国家安全保障会議(NSC)報道官は「北朝鮮兵がロシア軍と共に戦っているとの報道は確認できていない」と指摘。北大西洋条約機構(NATO)のルッテ事務総長も「現時点では未確認だ」と述べている。【ソウル日下部元美】