掲載料を目的にずさんな審査で論文を掲載する粗悪学術誌「ハゲタカジャーナル」と判定された約1万7000誌について、文部科学省科学技術・学術政策研究所(NISTEP)が調べた結果、約7割が掲載論文のデジタル保存の決まりを持たないなど、共通する複数の特徴が明らかになった。
ハゲタカ誌には明確な定義がなく、健全な学術誌との区別が難しかったが、複数の特徴が浮かび上がったことで、今後の対策に生かせる可能性がある。
ハゲタカ誌は、インターネット上で無料閲覧できる学術誌に紛れ込む形で急増している。問題点として、第三者による査読(論文の内容チェック)が不十分▽無許可で著名な研究者を編集委員として記載――などが指摘されている。
著者が数万~十数万円程度の料金を支払えばそのまま論文が掲載されるケースもあり、簡単に研究業績を得る手段として世界中で広がり、日本の研究者の利用も後を絶たない。また、研究者がそれと知らず投稿してしまうこともある。
NISTEPは、米国の分析会社が「ハゲタカ誌」と判定した学術誌のリストに2022年12月時点で掲載された約1万7000誌を分析した。
その結果、「デジタル保存のためのポリシーがない」という共通点が72%にみられた。健全な学術誌の場合、論文にまとめた研究成果やデータを他の研究者が長期間にわたって利用することを想定し、論文の内容に関するデータを適切に保存するなどの決まりがあることが多い。
他にも「論文が未掲載、またはアーカイブに論文がない」52%▽「サイトに査読方針が明記されていない」45%▽「サイトに出版社の住所を明記していない、または偽の住所を記載」38%――などの特徴がみられたという。
ハゲタカ誌の刊行は13~18年が特に多く、13、15年はそれぞれ年2000誌以上、16~18年は年1000誌以上増えていたという。10誌未満しか出していない発行元が全体の66%を占める一方、1200誌以上を出す発行元も2社あった。
分野別では医学系が全体の37%で最も多く、生物系22%、工学系13%など幅広い分野に広がっていた。
NISTEPは「研究評価で論文成果が重視される状況で、ハゲタカ誌が与える影響は大きい。(ハゲタカ誌かどうか)判別するための観点として参考になる」と指摘している。
ハゲタカ誌対策は国内の大学でも徐々に広がっている。ただし、一部の大学はハゲタカ誌に論文が載っても業績と認めないなど厳しい対応を取る一方、ほとんどの大学が研究者への注意喚起にとどまっている。【鳥井真平】