JR東日本などは11月1日から「公共ライドシェア」の実証実験を長野県野沢温泉村で始める。全国有数のリゾート地として知られる野沢温泉村でもタクシー不足が社会問題化しており、地元観光団体などと共同で、観光客や地域住民の足としての活用を検証する。
「公共ライドシェア」は、市町村やNPO法人が運行主体となり、一般ドライバーが自家用車などを使って有償で客を運ぶ。4月から東京や京都などの一部地域で始まった「日本版ライドシェア」とともに、移動手段が乏しい「交通空白地帯」の解消に向けて政府が普及を進めている。
野沢温泉村での実証実験は、村内の温泉街を対象に実施する。運行時間は毎日午前8時~午後6時を基本とし、午後6~11時の運行も、観光などのニーズを踏まえて実証実験の期間中に検討する。ライドシェアのドライバーとして10人程度を採用し、軽自動車3台を走らせる計画だ。
予約には配車アプリを使うが、アプリに不慣れな高齢者が多いことを想定し、電話でも受け付ける(その場合はオペレーターが利用者に代わってアプリを操作する)。アプリで現在地と目的地を入力してドライバーとマッチングし、事前に確定させたタクシーと同額の料金を、到着後にSuicaなどの交通系ICカード(PiTaPaを除く)で支払う仕組みだ。運転を担う一般ドライバーが混乱しないよう、今回の実証実験では決済手段を交通系ICカードに限定する。
野沢温泉村では、温泉やスキーを楽しむ訪日外国人客らが増えてにぎわう一方、地域住民がタクシーを利用しにくくなるなど生活に支障が出ているという。
そこで、一般社団法人野沢温泉マウンテンリゾート観光局(野沢温泉DMO)から「タクシー不足をライドシェアで補いたい」と相談を受けたJR東が、今回の実証実験を企画。野沢温泉DMOや村にあるタクシー会社「のざわ温泉交通」なども参加し、実施が決まった。
実証実験は2025年1月末まで。ドライバーと利用客へのアンケートなどを通じ、移動ニーズや運営方法、現金やクレジットカードによる決済の希望の有無などを検証する。
JR東の担当者は「実証実験を通じて課題を解決し、中期的には野沢温泉DMOやのざわ温泉交通などによる社会実装を目指したい」と話している。【嶋田夕子】