米大統領選(11月5日投開票)まで1カ月を切る中、オバマ元大統領が民主党のハリス副大統領を支援する活動を本格化させた。10日に東部ペンシルベニア州で集会を開催したのを皮切りに、今後も複数の接戦州で演説する見通し。共和党のトランプ前大統領と支持率が拮抗(きっこう)しており、ハリス氏陣営は総力戦で支持拡大を図る。
「私が出馬した時と同じような選挙運動のエネルギーが、地域やコミュニティーでまだ見られていないというのが、報告に基づく私の認識だ」。米メディアによると、現在も民主党支持者の間で人気が高いオバマ氏は10日、集会に先立って立ち寄った同州ピッツバーグの選挙事務所でこう懸念を示した。
念頭にあるのは、黒人の男性有権者だ。従来民主党の支持層とされてきたが、若者を中心に支持離れが指摘されている。オバマ氏はハリス氏について「あなた方と同じように育ち、大学に行き、苦労や痛み、喜びを理解している人物がいる」とする一方、トランプ氏については「あなた方を軽視してきた人物だ」と批判した。
その後の集会では「今回の選挙は接戦になる。新しい時代のリーダーを選ぶ機会があり、そしてより良く、より強く、より公平な米国を築き始めるチャンスがある」とハリス氏への支持を呼びかけた。
さらに経済政策や不法移民対策、人工妊娠中絶の権利擁護などを引き合いに出し、ハリス氏こそがとりわけ労働者や中間層のための候補だと強調。「トランプ氏は78歳の億万長者で陰謀論をまき散らしている。彼が気にかけているのは自身のエゴとカネと地位だけだ」と批判した。
米紙ニューヨーク・タイムズによると、オバマ氏の活動は主に、期日前投票が既に始まった州や郡に焦点を当てており、すぐに投票に行くよう促す狙いがある。さらに2008年と12年の大統領選でオバマ氏に投票した若者や有色人種の有権者の取り込みに狙いを定めているという。【ワシントン松井聡】