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「風当たりはきつい」 自民非公認の裏金議員、地元でおわび行脚


 「政治とカネ」問題がくすぶり続ける中で衆院が解散された。自民党の裏金問題に関与した前職らは、地元行脚で有権者に理解を求める。一方、大地震と豪雨に見舞われた能登半島では、いまだ避難所に身を寄せる人がいる。山積する課題について、政権がビジョンを明確にしないまま事実上の選挙戦が始まった。

 「ゼロからやり直し、皆さんのお役に立てるようにやっていく」。政治資金パーティー裏金事件に絡み、自民党から処分を受けた西村康稔元経済産業相(61)=兵庫9区=は5日、兵庫県淡路市の神社であった秋祭りに姿を見せた。

 当選7回。安倍内閣で官房副長官、経済再生担当相を経て旧安倍派幹部の一人となり「首相を目指す」と野心を隠さなかった。政治資金収支報告書への不記載額は100万円で、派閥の事務総長経験者として党員資格停止1年となった。

 衆院選は無所属での戦いを余儀なくされる。後援会や党所属の県・市議らの支援を受け、これまでとほぼ同様の態勢で臨むが、公認料は得られず選挙活動に制約も生じる。落選すれば比例復活の目もない。

 2023年12月に経産相を交代させられた後は、地元の駅立ちや集会で約1カ月、連日のように頭を下げ続けた。最近も地域行事などに頻繁に顔を出す。「脱税!」。街頭では厳しい言葉を投げつけられ、手渡したちらしを目の前で破かれたこともあった。

 地区後援会の幹部は「地元回りを『どうせ言い訳しに来ているだけやろ』と冷めた見方をする支援者もいる。本人は『初心に戻る』と言うが、理解してもらえるまで自分の言葉で説明し続けることが初心に戻ることだ。でないと足をすくわれる」と気を引き締める。

 ただ、最近の西村氏は記者に問いかけられても、何も答えないことが多い。地元議員らによると、西村氏はあくまで「記載の仕方が誤っていた」との認識で支援者らにもそう説明してきた。メディアが「裏金」と報じることに対する不信感があるという。

 「伏して伏しておわびする。二度と、みなさんに情けない思いをさせないと誓う」。解散前日の8日午後、旧安倍派に所属していた小田原潔元副外相(60)は地元・東京都日野市の駅前に立ち、約100人の聴衆に頭を下げていた。

 小田原氏は不記載額が1240万円あり、党の役職停止6カ月の処分を受けた。この日の街頭演説では政策を訴える前に、まず不記載に関する謝罪から入った。支持者らにも、訂正部分を記した政治資金収支報告書の写しとおわび文を配って説明している。

 東京21区で4回の当選を重ねるものの、うち2回は比例代表での復活当選。追い打ちをかけるように、党は9日、小田原氏ら6人を追加で非公認にすると発表した。取材に応じた小田原氏は「びっくりしたが、党の決定は真摯(しんし)に受け止める。当選したら自民(の会派)へ行く」と語った。

 「不信を抱かせたことに対してはしっかり反省し、立て直していかないといけない」。地元の福岡県田川市で、武田良太元総務相(56)=福岡11区=は5日、記者団にそう語った。

 不記載額が1926万円あり、党の役職停止1年の処分を受けた。関係者によると、謝罪行脚も兼ねて地元に戻る頻度が増え、6月にあった後援会の会合では「次の選挙は『みそぎ』となる」と深刻な表情で訴えたという。

 強固な後援会組織と知名度をバックに選挙戦では圧勝を重ねてきたが、「自民への風当たりはきつい」と陣営には緊張感も走る。武田氏を支援する自治体の元首長は「これまでの選挙に比べて票を減らすだろう。選挙民を甘く見てはいけない」とくぎを刺した。【入江直樹、野倉恵、松本昌樹】

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