札幌市立小学校に通う当時3年生の男子児童が同じスポーツ少年団に所属していた中学1年の男子生徒から性被害を受けたとして、札幌市教育委員会は8日、いじめ防止対策推進法の「いじめ重大事態」に認定し、識者らによる調査報告書を公表した。被害児童の母親(40)が取材に応じ、「PTSD(心的外傷後ストレス障害)など後遺症が起こるリスクが残っていると思うと、不安もあり、終わりがどこにあるか分からない」と苦しい胸のうちを打ち明けた。
調査報告書などによると、男子児童は2021年5月、3月まで同じ小学校に在籍していた男子生徒から、自宅近くの公園で計3回にわたって性被害に遭った。目撃者の通報で発覚し、男子児童の保護者が警察に相談。強制わいせつ罪や強制性交未遂罪に該当する行為があったとして、家庭裁判所の少年審判に付され、男子生徒は保護観察処分になった。
また、性被害に遭う前年の冬、男子生徒から帽子や手袋、ネックウオーマーを取られたり、雪山から押されて落とされたりするいじめ行為もあったという。
被害男児の母親は21年12月、いじめ重大事態として調査するよう小学校に要望したが、学校側は要望書を預かり、「落着した」と判断。再度要望が出され、市教委が翌年4月にいじめ重大事態として認定するまで調査を行っていなかった。
さらに、母親が近所に住む男子生徒と男子児童が顔を合わせることがないよう、中学校に男子生徒の通学ルートに配慮を求めたが、組織的な対応が取られなかった。これらの不備は調査報告書で指摘され、改善するよう求められた。
母親は「学校や市教委に身勝手な対応をされ、数え切れないほど心を殺された。相談をしても、断る理由から始まる。ほかの人も相談したとき、切り捨てられた方もいるのではないか。今ある制度でも救える命や心があり、それを実行してほしい」と涙ながらに訴えた。
また、加害生徒に対しては「母親として決して許すことはできないという気持ちを持っていると同時に、再犯をしてほしくないと思っている」と心情を吐露した。【高山純二】