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トランプ氏、接戦にいら立ち 中傷、虚偽情報など過激さに拍車


 11月5日の米大統領選まで1カ月を切る中、共和党のドナルド・トランプ前大統領(78)の過激な言動に拍車がかかっている。「政策論争に集中してほしい」という共和党や陣営幹部の願い通りには動かず、対抗馬である民主党のカマラ・ハリス副大統領(59)を中傷。バイデン政権の災害対応を不法移民問題と結びつけて、虚偽の情報を広めている。世論調査で接戦が続く中、思うように運ばない選挙戦へのいら立ちも透けて見える。

 「ハリスとバイデン(大統領)は、連邦緊急事態管理局(FEMA)のほとんど全ての予算を不法移民に与えた」。トランプ氏は7日に自身のソーシャルメディアへの投稿でこう主張した。9月下旬に米南部で200人以上の死者が出たハリケーン「へリーン」への政府の対応を批判する文脈だが、主張内容には根拠がない。

 トランプ氏は10月上旬から「FEMAの災害対応の予算が、不法移民のための住宅整備に転用された」と虚偽の内容を主張している。FEMAは税関・国境警備局(CBP)に協力して移民向けのシェルターを運営しているが、事業にはCBPの予算があてられており、FEMAの災害対応の予算とは別枠だ。

 FEMAは、この主張は「虚偽だ」と反論したが、トランプ氏は「10億ドル(約1480億円)がFEMAから盗まれ、不法移民に使われた」と言動を過激化させている。

 トランプ氏には、災害対応への批判を不法移民の問題と結びつけることで、バイデン政権のナンバー2であるハリス氏へのダメージを増幅させたい思惑がある。

 被害が大きかった南部ノースカロライナ、ジョージア両州は、大統領選の勝敗を左右する接戦州でもあり、有権者の不満をたきつける効果も狙っているとみられる。南部には別のハリケーン「ミルトン」が接近中で、トランプ氏がさらに批判を強める可能性がある。

 しかし、虚偽や誇張を避けて「自然災害に対応すべきFEMAが、不法移民の支援に関わっていることを、国民は不満に思っている」(共和党のジョンソン連邦下院議長)などと正面から批判することも可能で、トランプ氏の言動の過激さは際立っている。

 トランプ氏は9月下旬以降、ハリス氏への個人攻撃も強めている。自身の言動を棚に上げて、ハリス氏を「ウソつき」と批判し、「生来の精神障害がある」とまで中傷した。陣営や共和党内には「過激な言動は、まだ投票先を決めていない無党派層や穏健派に忌避される」との懸念があるが、トランプ氏本人はどこ吹く風だ。【ワシントン秋山信一】

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