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「中東のガンジー」ガザ出身医師 娘3人失っても「希望失わない」


 パレスチナ自治区ガザ地区のイスラム組織ハマスとイスラエルの戦闘が始まってから7日で1年となるのを前に、「中東のガンジー」とも呼ばれるガザ出身の医師が来日し、東京都内で記者会見した。戦闘開始以降、自身も40人の親族を失いながらも「希望を失ったことは一度もない」と力強い声で平和を訴えた。

 医師は、カナダ・トロント大教授のイゼルディン・アブラエーシュ氏。ガザの難民キャンプ出身で、パレスチナ人医師として初めてイスラエルの病院で働いた経歴を持つ。だが、2009年にガザの自宅がイスラエル軍に砲撃され、娘3人や親戚を殺害された。

 だが、憎しみではなく、イスラエルとの共存を訴え、医療や教育支援を通じた平和活動を続けてきた。ノーベル平和賞候補にも5回ノミネートされた。

 アブラエーシュ氏の半生を追ったドキュメンタリー映画「私は憎まない」の日本公開に合わせて来日。幾度となく理不尽な目に遭いながらも、イスラエル人の命もパレスチナ人の命も平等だという信念を貫き、両者の懸け橋になろうとする姿が描かれている。

 4日の会見では「数年前にも来日したが、その時はもっと希望に満ちた気持ちだった」と語り、深刻な人道危機が続くガザの現状について話し始めた。

 「皆さんは10月7日に何が起きたかを話すけれど、あの日に世界が一変したわけではない」。1948年以降、ガザで続いてきた占領の歴史の積み重ねが今の状況だと指摘した。

 「娘たちが殺された時、もし最後の犠牲者であるなら、平和のために受け入れようとした。ところが、悲しいことに最後ではなかった。今や何万人というパレスチナ人犠牲者たちの一部に過ぎなくなった」

 現在のガザについて、「亡霊の町」とも表現した。「全てのインフラが壊され、病院も学校も道路も残っていない。約8000万トンのがれきの下で、たくさんの人が殺されている。墓場そのものだ」。そして、「なぜ世界の人たちは、この絶望的な状況を目撃しても、何も思わないのだろうか」と目を赤くした。

 一方で、4日に都内であったイベントでは、映画を見て涙を流す観客の姿が印象に残ったと言う。「このような状況を受け入れてはいけない。周囲に伝えていく」と声をかけてくれた日本人女性がいたとし、「本当にその通りで、伝えることが大事だ。私は日本の人々の力を過小評価していない」と共に声を上げることの大切さを語った。

 映画のラストには、昨年10月以降の戦闘で亡くなったアブラエーシュ氏の親族一人一人の写真が映し出される。普通なら、近しい人を殺され、その責任も問われていないことに対し、憎しみを抱くだろう。

 それでも、こう語った。「娘たちが最後の犠牲者ではなかったことを考えると、なおさら決意を強くした。誰かを責めるのではなく、なおさら声を大にして、平和をもたらす努力をしなければならない。私は決して希望を失わない」

 全国各地の劇場で4日から順次公開中。上映日程は、ユナイテッドピープルの公式サイト(https://unitedpeople.jp/ishall/)で確認できる。【国本愛】

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