イスラエル軍は29日、親イラン組織フーシ派が支配するイエメンの西部ホデイダやラスイサの港湾や発電所などを戦闘機で空爆したと発表した。イスラエルは、イスラム教シーア派組織ヒズボラが拠点とするレバノンへの地上侵攻を準備しているとされ、フーシ派に攻撃に加わらないようにけん制する狙いもありそうだ。
フーシ派によると、空爆で4人が死亡、29人が負傷した。フーシ派は28日、イスラエル中部の空港に向けてミサイルを発射しており、イスラエル軍は「最近のイスラエルへの攻撃に対する報復」だと主張した。軍は7月にも、イランからの武器輸送に使われているとしてホデイダを空爆したが、イスラエルメディアによると、フーシ派はその後、武器輸送の活動の大部分をラスイサに移していたという。
イスラエルから1800キロ離れたイエメンのフーシ派への攻撃は、後ろ盾のイランもけん制する狙いがあるとみられる。ガラント国防相は「メッセージは明確で、我々にとって遠い場所は一つもない」とX(ツイッター)に投稿した。
フーシ派は、パレスチナ自治区ガザ地区のイスラム組織ハマスに連帯し、紅海を航行する船舶やイスラエルへの攻撃を繰り返してきた。今月15日にも、イスラエル中部に向けてミサイルを発射。ミサイルは空き地に落ちたが、避難途中に数人が負傷した。
一方、イスラエル軍は29日もレバノンへの攻撃を継続。東部バールベック・ヘルメルの空爆では21人が死亡した。
中東の衛星テレビ「アルジャジーラ」などによると、レバノンでは23日に大規模な空爆が始まってから、約8万人が隣国シリアに逃れた。国内では南部や東部から少なくとも11万6000人以上が避難所に身を寄せている。ミカティ暫定首相は29日「避難民は最大100万人に達する可能性もある」と懸念を示し、紛争拡大を防ぐには「外交以外に選択肢はない」と訴えた。【エルサレム松岡大地、カイロ金子淳】