広島大医学部6年、宇江美沙希さん(25)は、表現力や内面の美しさなどを競うコンテスト「2021ミス・ジャパン」の準グランプリに輝き、SNS(ネット交流サービス)の総フォロワー数は現在、約38万人に上る。動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」や動画投稿サイト「YouTube」で医学生の日常や受験のアドバイスなどをまとめた動画が人気を博している。
白衣姿で流行の音楽に合わせて踊り、「医学部あるある」や健康情報を発信するショート動画のほか、勉強の様子をそのまま流す動画も作る。経験に基づく勉強方法を伝え、受験生らの質問にも答える。「勉強のつらさがわかるからこそ役に立って応援したい」。寄せられたコメントは大切に目を通している。
岡山市出身。医学部受験を決めたのは高校2年の冬。人を救う仕事に憧れを抱き、子どもの頃に診てもらった女性の小児科医の姿が印象に残っていた。「患者目線に立って優しく寄り添う女医になりたい」。学生やキャンパスの明るい雰囲気にひかれ、広島大に進んだ。
念願の大学生活を満喫していたが、新型コロナの影響で日常は一変。2年の時は対面授業や部活ができず、家で過ごす日々が続いた。年末に帰省した際、母親がこう口にした。「若いうちに何でもやった方がいい。私もミスコンにでも挑戦すればよかった」。ネットで検索すると、ミス・ジャパンの募集締め切りがちょうどその日だった。「今の状況下でも挑めることがあるなら、熱中して取り組みたい」と、慌てて応募した。
そこで自身の強みにしたいと始めたのがSNSだ。大ファンというサンフレッチェ広島の公式グッズプロデューサーに就任するなど活動の幅も広げた。現在は卒業試験と医師国家試験に向けて多忙な毎日を送る。今の動画投稿頻度は週1~2回。編集作業が勉強の息抜きだ。
5年の時の病院実習で、高齢の患者を担当した。寡黙な男性だったが、毎日病室で顔を合わせるうちに生い立ちや仕事、趣味の話をしてくれるように。妻からは「こんなに話すのは久しぶり。うれしい」と言われた。時間をかけて患者と信頼関係を築き、共に治療に励んでいく医師の自分の姿が浮かんだ。
コロナ禍で不確かな情報が出回った際、「専門家が正しい知識を伝える大切さを痛感した」。どの診療科に進むか思案中だが、得た発信力を将来医師として有効に活用したいと考えている。【根本佳奈】