レバノン各地で18日、イスラム教シーア派組織ヒズボラの戦闘員らが所有する無線機(トランシーバー)が相次いで爆発し、ロイター通信などによると、少なくとも20人が死亡、450人が負傷した。
17日にはヒズボラのポケットベル(ポケベル)数千個が一斉に爆発して約2800人が死傷したばかりで、イスラエルの工作との見方が有力視されている。今回もイスラエルが関与した疑いが濃厚で、ヒズボラとイスラエルの緊張がかつてなく高まっている。
ロイター通信などによると、爆発したトランシーバーには大阪に本社を置く日本メーカーの名前が書かれたラベルが貼られ、「日本製」と書かれていた。
爆発が起きたのは午後3時(日本時間午後9時)ごろとみられる。ヒズボラが拠点としている首都ベイルート南郊やレバノン南部、東部ベカー平原など各地で爆発が相次いだ。
ベイルートでは17日の爆発による死者の葬儀が営まれていた場所でも爆発が起きた。また、中東の衛星テレビ「アルジャジーラ」によると、南部スールでは少なくとも2件の爆発が発生。このうち1件は同局の記者の後ろを走行していた車がいきなり爆発したという。レバノンの消防当局は負傷者の救助や火災の鎮火に追われ、国内は混乱に陥った。
トランシーバーはポケベルと同様、約5カ月前にヒズボラが導入していた。ヒズボラの指導者ナスララ師は2月、イスラエルによるサイバー攻撃を防ぐため、前線の戦闘員に対してスマートフォンを使用しないよう求めており、ポケベルとともに導入も決めたとみられる。
毎日新聞の取材に対し、この日本メーカーは「報道は承知しており、現在情報収集に努めている状況だ。確認できたものから順次ホームページで公表したい」と回答した。
17日に発生したポケベルの同時爆発では、イスラエルが事前に爆発物を仕掛けていた可能性が高い。今回もイスラエルが事前に工作し、遠隔で爆発させたとみられるが、イスラエルは一連の爆発についてコメントしていない。
ヒズボラはパレスチナ自治区ガザ地区の戦闘が始まった昨年10月以来、イスラム組織ハマスに連帯する形でイスラエルと交戦を続けてきた。だが、今回、連日にわたり所有する装備が爆発して多数のメンバーが負傷したことで、人員や通信手段に大きな被害が出たとみられる。ヒズボラは体制の立て直しに時間がかかるとの見方もあるが、17日の声明で報復を宣言しており、イスラエルに対して今後、攻撃をいっそう激化させる可能性がある。
地元メディアによると、レバノンのハビブ外相は18日、一連の爆発について「イスラエルがレバノンでの戦闘を拡大させると脅してから起きた。地域を暴力の連鎖に陥らせ、広範な戦争のシグナルとなる」と懸念を示した。【畠山哲郎、エルサレム金子淳】