マンションの一室で「メンズエステ」と称した性風俗店を営業するため、女性従業員を住人と偽り賃貸借契約を結んだとして、警視庁保安課は18日、不動産仲介業者「エイトハウス」(東京都新宿区)代表取締役の直井延浩容疑者(36)=東京都新宿区=を詐欺容疑で逮捕したと発表した。
東京都内では、条例により店舗型性風俗店の新規開業は一部のエリアでしか認められていない。警視庁は、直井容疑者が営業の禁止区域で店舗を構える性風俗業者を相手に、不動産の仲介を繰り返していた疑いもあるとみて調べている。
逮捕容疑は今年3月、禁止区域内の東京都中央区のワンルームマンションで性的サービスをするマッサージ店を営業することを隠し、女性従業員(30)を住人とする賃貸借契約を不動産管理会社と結んだとしている。直井容疑者は「弁護士と話してから決めたい」と認否を留保しているという。
警視庁によると、直井容疑者は、不動産管理会社から借り主との仲介や審査を依頼されていた。性風俗店として利用することが発覚しないよう、女性が一般の会社で働き、住居を探していると偽装して書類を作成していたとみられる。性風俗店の男性経営者(38)とは、コンサルティング業者の紹介で知り合い、手数料などとして約12万円を受け取っていたという。
男性経営者は7月、今回の事件とは別のマンションで経営していたマッサージ店で女性に売春させたとして、売春防止法違反の疑いで逮捕され、その後起訴された。
警視庁は男性経営者と名義人の女性従業員についても、虚偽の申請でマンションの賃貸借契約を結んだ詐欺容疑などで書類送検した。
転貸契約「サブリース」を悪用か
警視庁によると、「エイトハウス」の仲介で性風俗店が営業されていたマンションの部屋は、所有者と不動産管理会社との間で、転貸契約「サブリース(借り上げ家賃保証)」が結ばれていた。
サブリースは業者が物件を所有者から借り上げ、入居者の有無にかかわらず一定の賃料を保証して支払う。安定した収入が見込めるとされる一方、所有者のチェックが届きにくくなり、今回のように物件が悪用されるケースもある。
サブリースのトラブルに詳しい三浦直樹弁護士(大阪弁護士会)は「投資目的でサブリース契約を結び、物件を管理会社に一任している場合、違法行為に使われていることに気付きにくくなる可能性がある」と指摘する。
警視庁幹部は「物件が違法行為に使われると資産価値が下がる。所有者もリスクを認識して注意してほしい」と警鐘を鳴らす。【加藤昌平】