文化庁が17日に公表した2023年度の国語世論調査では、ローマ字の表記に関する設問もあった。ローマ字の表記には1954年の内閣告示で定められた「訓令式」と地名やパスポートで広く使われている「ヘボン式」があるが、調査では母音を伸ばす際に訓令式を使う人は少数派だった。文化庁はヘボン式を土台とする表記へ約70年ぶりの見直しに向けて議論しており、今回の結果を参考にするという。
内閣告示では「一般に国語を書き表す場合」は原則、訓令式を用いると定めており、学習指導要領の小学校3年生の国語でも告示を踏まえた指導を求めている。一方、道路標識や駅名、パスポート表記などでは英語表記に近いヘボン式が広く使われていることから、盛山正仁文部科学相は5月、ローマ字表記のあり方の検討を文化審議会に諮問し、有識者会議での議論が進んでいる。
調査では、母音を伸ばす「長音」についてローマ字で読み書きしやすい表記を尋ねた。長音の表記は、訓令式では母音の上に山形の長音符号を付けて「ô」「û」などと表すとしている。ただ、JRの駅名表記などでは棒線状の「ō」「ū」が一般的だ。
「交番」は「kōban」が40・8%▽「kouban」が37・0%▽kôbanが9・0%――などとなった。「牛丼」は「gyūdon」が37・9%▽「gyudon」が29・0%▽「gyuudon」が23・5%▽「gyûdon」が5・8%――など。「大江戸」や「母さん」でも訓令式の「Ôedo」「kâsan」の使用はいずれも10%に満たなかった。
文化庁国語課によると、現在のヘボン式では、長音符号を用いる場合とそうでない場合がある。例えばJR東京駅ホームの表記は「Tōkyō」の一方、交番の看板は「KOBAN」となっている。長音符号がない場合、「交番」か「小判」なのかが区別しづらいという課題もある。
このため、文化審議会ではヘボン式を軸とした見直しを検討しつつ、長音符号は残す方向で議論を進めている。担当者は「具体的な長音符号のあり方などは、今回の調査結果を参考に議論を進めていく」としている。【西本紗保美】