8月末の台風10号で折れた「弥生杉」(鹿児島県屋久島町)の今後について、林野庁屋久島森林管理署は、国、県、町、観光協会、樹木医などの有識者ら20人弱による検討会を今月にも設置することを決めた。月1回程度話し合い、折れた部分を伐採するか、そのままの形で保存するかなどの結論を年内に取りまとめたいという。
弥生杉は観光地の「白谷雲水峡(しらたにうんすいきょう)」にあり、推定樹齢3000年、高さ約26メートル、幹回り約8メートル。同じ屋久島の縄文杉、紀元杉と並び、林野庁選定の「森の巨人たち百選」にも入っている。
屋久島では8月28日午後8時過ぎに46・8メートルの最大瞬間風速を観測。弥生杉は根元から約1・5メートルを残して折れているのが同31日、観光ガイド「屋久島ガイドオフィス山岳太郎」によって確認された。再生させるのは不可能とみられる。白谷雲水峡自体、現地へ行く県道が通行止めになるなどしため少なくとも年内は閉鎖される見通しという。
一帯では1997年9月の台風で蛇紋(じゃもん)杉」(樹齢約2000年)が倒木。2010年9月には樹木内部の腐食により「翁(おきな)杉」(同)も折れた。いずれもそのままの形で保存され、その周りから新しい植生が育まれている。山岳太郎の渡辺太郎代表(47)は「来訪者を案内する上で、現地に残っていれば自然の推移を感じてもらう素材にもなる。通行を妨げる部分は撤去して博物館(屋久杉自然館)でいろんな人に見てもらう形になれば」と期待する。同館では、05年の大雪で折れた縄文杉の大枝(長さ約5メートル、重さ約1・2トン)が展示されている。
屋久島森林管理署の歌野邦美(うたのくによし)・森林技術指導官は「検討会の議論次第ではあるが、個人的には折れたまま観光資源としても生かせる形になってほしい」と話している。【梅山崇】