11月の米大統領選を巡って、共和党のドナルド・トランプ前大統領(78)が「不正の監視」の重要性を訴え、当局にも協力を求めている。当選した場合には「不正の捜査」を行うとしているが、落選した場合に、前回に続いて「不正な選挙だ」と主張するための布石を打っているとみられる。
「良い選挙を行わなければならない。我々の選挙はひどいものだ」。トランプ氏は10日、民主党のカマラ・ハリス副大統領(59)との候補者討論会でこう強調した。「民主党は不法移民に投票させようとしている。だから、米国への不法越境を許しているのだ」と根拠のない陰謀論も展開した。
トランプ氏は、6日には警察官の全米組織の集会に参加し「間もなく(期日前の)投票が始まる。選挙の不正を監視してほしい」と訴えた。7日のソーシャルメディアへの投稿では「弁護士や法学者と共に、高潔な選挙になるかどうか注視している」と記述。「私が当選した場合、選挙で不正を行った者は訴追され、長期の収監を伴うものも含めて最大限の法律が適用される。政治活動家や弁護士、腐敗した選管当局者も対象になる」と警告した。
これに対して、ハリス陣営は「政敵を投獄すると脅迫するだけでなく、警察官に選管職員を脅すよう命じている」と反発。2020年大統領選の敗北を認めないトランプ氏の支持者らが、21年1月に選挙結果の集計手続き中だった連邦議会を襲撃した事件を挙げて、「再び事件を起こす環境を作っている」と批判した。
今回の大統領選では、既に一部の州で郵便投票用紙の発送が始まっている。16日からは、最大の激戦が予想される東部ペンシルベニア州を皮切りに期日前投票も始まる。
トランプ陣営は「郵便投票は不正の温床だ」と訴えた前回と異なり、今回は期日前・郵便投票も積極的に呼びかけているが、今後も「選挙の不正」を巡る主張を強めるとみられる。【ワシントン秋山信一】