働く若手男性の早期リタイアの希望者が増えている――。民間調査会社が今年実施したアンケートで、そんな実態が浮かび上がった。少子高齢化が進展し、かつてなら定年が近い人ですら「働き盛り」とみられる時代に、若者の意識が変化した背景には何があるのか。
調査はパーソル総合研究所が全国15~69歳の働く男女1万人を対象にした「働く10000人の就業・成長定点調査」。2017年から毎年2~3月に実施し、働き方に関する意識などを尋ねている。
「人生で何歳まで働きたいと思うか」との質問に対する回答は、平均で20代男性が58・0歳、30代男性は62・4歳だった。1回目の17年調査時は、20代男性が63・8歳、30代男性が66・6歳で、それぞれ4歳以上早まる結果となった。
また、リタイア希望年齢について、20代男性で「50歳以下」とした人の割合は計29・1%で17年の計13・7%から2倍以上増加。30代男性で「55歳以下」とした人も計14・3%から計28・1%と約2倍になった。
20~30代の女性や、40代以上の男女はおおむね横ばいで推移しており、パーソル総研の金本麻里・研究員は「20~30代男性で特異的に早期リタイアしたいと考える人が増えている」と分析している。
なぜ早期リタイアを望むのか。50歳以下リタイア希望の20代男性、55歳以下希望の30代男性にそれぞれ尋ねた回答のトップはいずれも「働くことが好きではない」(20代=29・9%、30代=31・8%)だった。次いで「家族や友人との時間や趣味などプライベートな生活を充実させたい」(20代=16・7%、30代=20・9%)だった。
希望理由には変化も見られる。その一つが、「リタイア後の生活のための蓄えが十分ある」だ。20年調査時と比べると、20代は約5ポイント増の13・8%、30代は約6ポイント増の14・6%だった。金本さんは、米国発のFIRE(経済的自立と早期リタイア)のように資産運用などで資産を築いて計画的に早期リタイアすることが注目されていることや、共働き世帯の増加で必ずしも男性が家計を支え続けなくてもよいという人が増えていることなどを、考えられる背景に挙げている。
金本さんは、若手男性が早期リタイアを希望する心理について「仕事に対する意欲が低下したわけではない」とした上で、「プライベート重視」の意向が広がっていることや、日本型雇用の減少といった労働環境の急速な変化で「将来像を描きにくい」などの可能性も指摘した。【嶋田夕子】