「地上の楽園」との宣伝を信じて日本から北朝鮮に渡った後、過酷な生活を強いられたとして現在は韓国で暮らす5人が北朝鮮当局に慰謝料を求めた民事訴訟の判決が12日、ソウル中央地裁であった。同地裁は北朝鮮側に不法行為があったと認め、北朝鮮に原告1人あたり1億ウォン(約1060万円)の支払いを命じた。
韓国大手紙「朝鮮日報」などによると、同様の判決は韓国で初めて。北朝鮮は裁判に参加していないため、判決は確定する見通し。ただ、北朝鮮に直接慰謝料を請求するのは難しく、判決を履行させるのは事実上不可能だ。
日本と北朝鮮の赤十字社は1959~84年、在日朝鮮人らの帰還事業を実施し、約9万3000人が北朝鮮に渡った。原告の5人は帰還事業で北朝鮮に渡った後、過酷な生活を強いられ、脱北して韓国に渡った。今年3月に提訴していた。
原告の支援団体は12日、原告の救済策を検討すると表明した。具体的には、過去に韓国が実施した対北朝鮮の経済協力資金のうち、北朝鮮側に支給されていない財産を探して慰謝料に充てる方法などを考えているという。
日本国内でも、脱北者が北朝鮮に対して損害賠償を求める同様の訴訟を起こしている。【ソウル福岡静哉】