「×逆走×」と赤地に白で記された標識が、計64枚も並ぶ高速道路のインターチェンジ(IC)がある。これほど大量の標識が必要な理由とは――。
世界遺産・石見銀山遺跡などで知られる島根県中部の大田市。市内を通る山陰道「朝山・大田道路」の大田朝山ICの二つの出口に、その標識は32枚ずつある。
ICの出入り口の交差点は、中央に円形の「島」がある環状交差点(ラウンドアバウト)が二つつながった「ツインラウンドアバウト」という珍しい形をしている。2018年3月に朝山・大田道路が開通したのに合わせて、国内で初めて導入された。
通常の交差点は、直角に交わる道路を信号などで制御している。一方、ラウンドアバウトは交差点の中心に通行不可の島を設置し、車はそのまわりを回転通行して進行方向を変えることができる。重大事故の減少や高速道の逆走防止効果が期待された。
しかし、開通から約3カ月後、大田朝山ICから山陰道に入ろうとした70代男性が運転する軽乗用車が、誤って出口から侵入し約4キロを逆走。避けようとして停車した乗用車に後続車が追突し、3人がけがをする事故が発生した。
そのため、国土交通省松江国道事務所は、二つつながったラウンドアバウトの形状を一部改良。さらに、有識者らによる委員会で対策を検討し、逆走していることを効果的にドライバーに伝えるために、計64枚の標識を設置することになったという。
国交省などが作成した資料によると、近年は高速道路の逆走が全国で年間約200件で推移し、そのうちの2割程度が事故につながっている。逆走の開始位置はICやジャンクションなどの「分合流部・出入口部」が最多で、逆走をしたドライバーの約7割が65歳以上だ。
逆走車にだけ立体的に見える路面標示など、全国的に逆走防止対策が進められている。同省の担当者は「逆走は重大事故になる可能性が高い。逆走してしまった場合はパニックを起こさず、安全な場所に停車して警察などに連絡してほしい」と呼びかけている。【目野創】