米民主党のジョー・バイデン大統領は、秋の大統領選での再選断念と選挙戦からの撤退を表明する場としてX(ツイッター)を選んだ。実業家イーロン・マスク氏による買収後、情報インフラとしての公共性が問われてきたXが、依然として有力なプラットフォームであることを改めて示した形だ。マスク氏は大統領選で共和党のドナルド・トランプ前大統領を支持する考えを示している。
「Xは歴史的出来事が起きる場所だ」。Xのリンダ・ヤッカリーノ最高経営責任者(CEO)は、バイデン氏が撤退を表明した投稿をリポストし、自社のサービスが全世界が注目する発表の舞台となったことを自賛した。
バイデン氏は声明に続けて、後任の大統領候補としてカマラ・ハリス副大統領を支持する意向も最初にXで発表した。フェイスブックには数分遅れて同じ内容を投稿した。ヤッカリーノ氏はCBSなど3大ネットワークの速報は、Xでのバイデン氏の投稿から15分以上後だったとする投稿を引用してXの「速報性」の高さも強調した。
マスク氏はXへの投稿で「彼らは遅すぎる」と主要メディアをくさし、「ホワイトハウスの側近たちは、Xを読んでバイデン氏の撤退を知った」とも投稿した。
ニューヨーク・タイムズ紙によると、バイデン政権高官が撤退を知らされたのは、バイデン氏がXに投稿する1分前だったという。共和党の副大統領候補であるJ・D・バンス上院議員やマイク・ジョンソン連邦下院議長などもバイデン氏の撤退表明を受けた反応をXに投稿した。
Xはマスク氏による仕様変更を経て、一定の閲覧数などを獲得した利用者に広告の収益を分配する仕組みが導入された。閲覧数を稼ぐために災害時などに偽情報や誤情報が拡散する例が問題視され、ユーザーのX離れが指摘される中でも影響力を示した。
トランプ氏はかつてツイッターのヘビーユーザーだったが、2021年1月の米連邦議会襲撃事件をめぐる投稿が暴力を誘発する恐れがあるとしてアカウントを凍結された。その後、ツイッターを買収したマスク氏が、22年11月にトランプ氏のアカウントを復活させた経緯がある。
自身が設立したソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」で発信を続けるトランプ氏は、23年8月の投稿を最後にXを更新していない。【ワシントン大久保渉、ニューヨーク八田浩輔】