海上自衛隊の複数の艦艇で、国の安全保障に関わる機密情報の「特定秘密」を資格のない隊員たちに取り扱わせる違法な状態が続いていたことが、政府関係者への取材で判明した。防衛省は複数の幹部の処分を検討しており、海自トップの酒井良・海上幕僚長は引責辞任する意向を示しているという。
特定秘密は防衛、外交、スパイ活動防止、テロ防止の4分野の情報のうち、漏えいすれば国の安全保障に支障をきたす恐れがあるもので、2014年施行の特定秘密保護法で規定されている。情報を扱う人は犯罪歴や精神疾患、経済的な状況などを調べる適性評価をクリアしなければならない。
内閣官房の公表資料によると、特定秘密は23年末時点で約750件が指定され、省庁別では防衛省が約430件で最も多い。
海自では護衛艦「いなづま」で22年当時、艦長が適性評価を受けていない隊員に、戦闘指揮所で特定秘密に当たる船舶の航跡情報を取り扱わせていたことが後に発覚。適性評価の実施状況の確認を怠っていたことも判明し、防衛省は今年4月、当時の艦長らを停職や減給の懲戒処分とした。
政府関係者によると、これを受けて他の艦艇などについても調べたところ、複数の艦艇で適性評価をクリアしていない隊員が特定秘密を扱う任務についているケースなど、違法な状態が相次いで確認されたという。長年にわたり常態化していた可能性もあるとみられる。外部への情報の漏えいは確認されていない。
同省は海上幕僚監部で特定秘密を管轄する部署にいた歴代の幹部や艦艇の艦長らの処分について検討している。今月中にも、調査結果と処分内容を公表する方向で調整を進めている。【松浦吉剛、中村紬葵】