警察庁は30日、中央線や車線がない一般道の最高速度を時速60キロから30キロに引き下げる方針を明らかにした。対象は住宅街などを通る「生活道路」が中心となる。車と歩行者の事故を減らすのが狙いで、2026年9月に導入する方針。
道路交通法施行令では、速度規制標識のない一般道を車が走る際の最高速度を時速60キロと定めており、これを改正する。普通車でのこの見直しは、施行令が1960年に制定されて以来、初めて。
時速30キロに引き下げるのは、中央線や分離帯、中央で分けるゴム製の柱などがない道路と、複数の車線がない道路で、いずれも速度規制標識がない場合。幹線道路ではなく、住宅街などの生活道路が主な対象となる。総延長がどのぐらいになるかなどを国は集計していない。それ以外の道路は60キロのまま。
生活道路は、車が歩行者や自転車の近くを走行したり、歩道と車道がはっきり分けられていなかったりすることから、危険性が指摘されてきた。
23年の交通事故件数は30万7930件で、10年前と比べて半分以下に減っているが、幅5・5メートル未満の比較的狭い道路で起きた事故の割合は24%で、10年前からほとんど変わっていない。23年に狭い道路であった事故の死傷者のうち歩行者と自転車の割合は、幅5・5メートル以上の道路に比べて1・8倍の高さだったという。
速度規制標識のない幅5・5メートル未満の道路では23年に死亡事故が204件起きている。
警察庁が08年度にまとめた報告書によると、時速60キロで走る車が急ブレーキを踏んだ場合、停止するまでの距離は約35メートルだが、時速30キロでは10メートル超で止まる。
また、車が時速30キロを超える速度で歩行者と事故を起こすと、歩行者側の死亡率が急上昇するとのデータもある。
学校周辺や住宅街の一定の区域内では、時速30キロ以下に抑える「ゾーン30」という取り組みが広がっている。1990年ごろから欧州の都市部を中心に導入された制度で、警察庁が11年に都道府県警に推進を通達。23年度末までに全国4358カ所で導入された。
時速30キロは事故減少に効果を見せており、ゾーン30の整備前後それぞれ1年間の死亡重傷事故の発生件数を比較すると、整備後には29%減少。うち歩行者と自転車の事故は26%減った。
今回の見直しについて警察庁幹部は「狭い道路では時速30キロまでの走行を当たり前にしていきたい」と話す。
警察庁は31日から6月29日まで、パブリックコメント(意見公募)を受け付ける。その後の7月下旬に公布、26年9月の施行を目指す。【山崎征克】