日本製鉄による米鉄鋼大手USスチール買収を巡り、両社は30日、欧州やメキシコなど米国を除く全ての規制当局から承認を得たと発表した。ただ、11月に大統領選を控えた米国では、外資による米名門企業の買収が政治問題化しており、買収完了の道筋は依然として不透明だ。
世界鉄鋼協会によると、2022年の粗鋼生産量で日本製鉄の生産能力は4位。27位のUSスチールを買収すれば3位の規模となり、市場独占などの問題がないか、欧州や各国の規制当局が審査していた。
USスチールのデビッド・ブリット最高経営責任者(CEO)は「規制当局の承認をうれしく思う。買収が競争促進的で、海外投資の戦略的メリットを支持すると明確に示すものだ」との声明を発表した。日本製鉄の森高弘副会長も、声明で「規制当局の承認に感謝する。顧客、従業員など全ての関係者の利益になると確信している」と述べた。
両社は24年後半の手続き完了を目指すが、それには米当局の承認が必要。米メディアによると、米司法省が反トラスト法(独占禁止法)に基づく調査を始めたのに加え、安全保障上の懸念を理由にした当局審査も実施されているとみられる。バイデン大統領は、買収に反対する全米鉄鋼労働組合の意思を尊重する考えを示している。【ワシントン大久保渉】