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被害者は動画配信の古株…捜査員が直面した「壁」 多摩川・遺体遺棄


 川崎市川崎区の多摩川岸辺で2023年12月、スーツケースの中から男性の遺体が見つかった事件は25日、発生から約5カ月を経て元交際相手ら5人が逮捕されるという新局面を迎えた。被害者の原唯之さん(46)はインターネット配信の世界では、「唯我」の名前で活動する古株の存在として知られていた。こうした背景から事件の真相に迫る捜査員は予期せぬ“壁”にぶち当たっていたという。

聞き込みができない

 「事件解決が遠のき、容疑者に逃げられてはいけない。ある時期からは被害者を知る関係者に一切、当たれなかった」。複数の捜査関係者は、今回特有の捜査継続の難しさを吐露した。

 事件の糸口をつかむには関係者への聞き取りは「捜査のイロハ」だ。しかし、原さん自身が、日々の出来事や金銭事情なども開けっぴろげにネットを通じて広く発信する古くからの動画配信者。知人には同じように動画配信を収入源にする人も多かった。

 事件後、配信サイトやSNS上では事件現場にとどまらず、被害者にまつわる生前のトラブルやプライバシーに関係する真偽不明の情報があふれる異様な光景が広がった。「考察」「調査」と称して、事件の犯人について持論を披露して第三者を犯人視する内容も相次いだ。警察を悩ませたのは、捜査の拠点を置く川崎臨港署をスマートフォンで動画配信しながら訪問してきたり、警察に「情報提供」と称してやり取りの様子を配信で流したりする人もいたことだ。

「警察から着信」公表投稿も

 警察からの着信を示す電話番号をSNSで公表する投稿もあった。「再生数稼ぎ」との批判も一部にはあったが、善意なのか事件の便乗商法かは配信者しか分からない。警察は、関係者に話を聞くことで捜査情報が漏れたり、外部に公表されたりすることで第三者に誤解を与えかねない――。そんなリスクに直面し、関係者への聞き込みというイロハに傾注できないジレンマを抱えつつ、押収した証拠品の鑑定や解析、防犯カメラ捜査といった客観証拠により重点を置いた。

 こうした状況について、捜査幹部は「以前にはなかった現象。特殊だった」と困惑した。動画配信を巡るトラブルは今後も想定される。県警では従前から捜査に協力してくれた人には捜査情報を外部に漏らさぬよう依頼しているが、別の県警幹部は「今後は、より『お願い』の必要度が高まる。約束が守られずにリスクが増すのかも慎重に見極めなければ。これまで以上に客観証拠を重視して捜査を進めていくのみだ」と冷静に語った。【宮本麻由、柿崎誠】

問われる現代社会のモラル

元埼玉県警捜査1課刑事・佐々木成三さん

 警察が情報のネットでの拡散にリスクを抱えて関係者の捜査に苦慮したとすれば、極めて珍しい事例だ。秘匿情報が外部に漏れれば犯人に逃走、証拠隠滅の機会を与えかねないし、立件に必要な秘密の暴露が流れてしまえば公判を維持できない恐れさえあり、大きな問題だ。一方、情報提供者から話を聞くには、警察が対外的に公表していない情報を一部伝えながら情報を引き出すのが手段のため、今回の捜査は難しかったはず。捜査情報を外部に拡散して解決が遠のくとすれば、まさに現代社会のモラル(道徳観)の欠如に尽きる。また、推測により第三者を犯人視することは当然、名誉毀損(きそん)になり、あってはならない。

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