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正倉院にあった大量の木片、小塔の部品と判明 苦肉の策で寄木か


 正倉院(奈良市)で8対の箱に収められていた大量の木製の小片の一部が、小塔を寄木(よせぎ)造で構成する部品だったとみられると判明した。接着剤で貼り合わせた跡もあった。正倉院では寄木造の箱などが知られているが、建築物を模した小塔などでは例がないという。手間のかかる寄木造とした背景は、貴重な輸入品の木材・紫檀(したん)が十分に確保できない中での苦肉の策とも考えられるという。

 小片は「紫檀塔残欠」と呼ばれ、8対16個の木箱と、別の宝物の部品と混ぜられた木箱に計582個が保管されている。手すりの一部とみられる部品もあることから、1941年の「正倉院御物図録」(帝室博物館)では「塔の雛形(ひながた)(ミニチュア)」と考えてまず間違いないと記述されているが、これまでの研究例は53年発表の論考ただ一つのみだった。

 今回、文化財建造物保存技術協会の春日井道彦参事が小片一つ一つの形状を改めて検証すると、小片同士を相互に組み合わせられるようにしている部分がいくつもあることが新たに判明。表面のみに紫檀を貼り付けた部品や、紫檀だけでは厚みが足りなかったとみられる部分を他の樹種の小片で補った部品などもあった。

 また、多くの小片の表面についていた樹脂を分析したところ、貴重な輸入品の香料「乳香」だったことも分かった。乳香は接着力が低く建築には向いていないが、ガラスなどの工芸品では接着剤としても使われていた。春日井氏は「実際の建築物と組み方まで同じにする雛形でなく、拝む対象などとして作られた工芸品だったと考えられる。寄木構造は貴重な紫檀を小さな破片まで無駄にしない工夫と言え、複数の小建築物を分解した紫檀の部品を別の宝物修理のためにまとめていたのでは」と分析した。

 研究結果は正倉院が17日にホームページに掲載した正倉院紀要46号に掲載された。【稲生陽】

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