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「備えは重要」 コロナ禍で見えてきたこと 群馬大大学院神谷教授


 新型コロナウイルス感染症の治療や医療提供に関する国の公費支援が終了し、4月から通常の医療提供体制へと移行した。ただ、新型コロナそのものが終息したわけではない。4年間にわたるコロナ禍で見えてきたこととは。国内では数少ないコロナウイルスを専門とする研究者、群馬大大学院の神谷亘教授(ウイルス学)に聞いた。【庄司哲也】

 「新型コロナの感染が広がり始めた時、多くのウイルス研究者は、将来的に風邪の原因ウイルスのような存在へと落ち着いていくのではないかと考えた。4年間のコロナ禍を観察すると、実際に風邪ウイルスのように人間と共存するようになっていくのではないか」

 人間に感染するコロナウイルスでは、4種類のヒトコロナウイルスの存在が知られていた。風邪の原因となるウイルスで、日常的に感染はするものの軽い症状しか引き起こさない。当初は重篤な肺炎を起こすこともあった新型コロナも次々に変異し、感染が拡大していくにつれて症状は比較的に軽くなっていった。今後さらに弱毒化が進めば風邪ウイルスと同じく人と共存していく可能性があるという。

 国際ウイルス分類委員会は2020年2月、新型コロナを「SARSコロナウイルス2」と名付けた。02年に中国南部を中心に感染が広がった重症急性呼吸器症候群(SARS)のウイルスと遺伝的に近いことが理由だ。

 ウイルスが人の体に感染するためには、ウイルスのスパイクたんぱく質と細胞の表面に存在する受容体たんぱく質が結合しなければならないが、新型コロナはSARSウイルスと同様に「ACE2」という受容体たんぱく質を利用する点も共通していた。

 ACE2は、鼻やのどなど上気道の粘膜上皮細胞や肺の肺胞上皮細胞に比較的多く存在する。神谷教授によると、この点がパンデミック(世界的大流行)の要因の一つになったと考えられるという。「呼吸器を介して感染していくウイルスは概して広まりやすい。一方でSARSと違い、症状を示すことなくほかの人に感染させてしまう『不顕性感染』だったことも爆発的に広がった要因ではないか」

 新型コロナはコウモリを宿主とするウイルスとみられ、日本国内に生息するコウモリからも新型コロナと遺伝的に近縁なウイルスが検出されている。このウイルスは人に感染する可能性は低いとみられるが、ほかの動物への感染の可能性などさらに詳しく調べる必要性が指摘されている。

 神谷教授は「SARSの終息後も中国では捕獲したコウモリからSARSコロナウイルスと非常に似たウイルスが検出されてきた。日本国内ではそうした研究が行われてこなかったが、新型コロナの感染拡大で国内でも調査が行われるようになった。新型コロナでその必要性を私たちウイルス研究者が改めて学んだ」と話す。

 SARS、12年に確認された中東呼吸器症候群(MERS)、そして19年の新型コロナと人類は20年間に三度のコロナウイルスによる感染症を経験した。近いうちに次のウイルス感染症はあるのだろうか。

 「そこはわからない点だが、備えは重要。ウイルスの研究でも、感染拡大を引き起こしたSARSコロナウイルスだけでなく、研究のすそ野を広げなければならない。研究者の人材育成も必要だろう」。神谷教授はそう説明する。

 続けて私たち一人一人のウイルスとの向き合い方も指摘した。「ほぼ全ての人が新型コロナの感染が拡大した社会を経験した。『最終的には大したものにはならない』という認識が広がると、次のウイルス感染症が拡大したときに人の対応が変わる恐れがある。ウイルスの広がりには、人の行動という要因が入らざるをえず、終息へのシナリオが変化する可能性は否定できない」

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