英領北アイルランドで3日、自治政府首相にカトリック系政党「シン・フェイン党」のミシェル・オニール副党首(47)が選出された。英国から分離し、隣国アイルランドとの統一を訴える同党からの首相選出は初めて。
同党は2022年5月の議会選で初めて第1党に躍進した。だが第2党で英国残留の継続を望むプロテスタント系の民主統一党(DUP)が組閣に抵抗。その後は政治空白が続いていたが、約2年ぶりに自治政府復活が決まった。
DUPの抵抗の背景にあるのは、英国の欧州連合(EU)離脱だ。20年12月の離脱完了に伴い、英EU間には通関手続きが復活。だが英領北アイルランドは「特別扱い」となり、陸続きのEU加盟国アイルランドとの自由な物流が認められた。
その代わり、北アイルランドと英本土(イングランドなどがあるグレートブリテン島)との間には、同じ英国にもかかわらず通関手続きが発生。これに対し英国との一体性を重視するDUPが反発し、政治混乱が続いていた。だが今年に入り、英政府が物流の自由を保証する措置を明らかにしたことで、DUPも組閣に応じた。
北アイルランドでは、親英派プロテスタント系と親アイルランド派カトリック系が争った「北アイルランド紛争」(1968~98年)で3000人以上が犠牲になった。98年の和平合意に基づき、その後は自治政府の閣僚ポストを両勢力で分け合う統治が続いている。【ロンドン篠田航一】