呼吸機能が低下した患者が在宅酸素療法の装置を利用中に火災が発生し、2021年以降の3年間で60~90代の男女15人が死亡していたことが一般社団法人「日本産業・医療ガス協会」の調査でわかった。このうち喫煙が原因(推定含む)と判断されたのは4件あった。患者の中には喫煙の習慣を続けている人もいるとみられ、同協会は火気とは距離を置いて酸素供給装置を利用するよう呼びかけを強めている。
この治療法では、肺や心臓の疾患で呼吸機能が低下した患者の鼻に、酸素ボンベなどからチューブを通じて酸素を送る。「慢性閉塞(へいそく)性肺疾患」(COPD)の患者が利用することで知られ、COPD患者の大半が喫煙経験者とされる。
同協会によると、利用者が自宅で火災に遭って死傷する重大な事故は、03年10月~23年11月末では103件に上り、94人が死亡していた。火災の原因は喫煙が39件(約4割)を占め、原因特定された中では最多だった。
漏電は7件、ストーブや線香などの「その他」は16件、原因が不明だったのは41件だった。装置自体が火災の原因になったケースはなかった。協会の担当者は「治療の上でも良くないのに、喫煙を続けている人が多いのでは」としている。
在宅酸素療法の装置を利用中に火気が近くにあると、酸素が燃焼を促して、チューブや洋服などに燃え移る恐れがある。厚生労働省は室内で装置を使う時は、2メートル以内に火が出るものを置かないよう注意を呼びかけており、担当者は「(装置の)使用経験が浅く使い方に不安がある人や、逆に慣れていて漫然と使っている人は特に注意してほしい」と話している。【高橋由衣】