イエス・キリスト生誕の地とされるヨルダン川西岸のパレスチナ自治区ベツレヘムで24日、多くの教会でクリスマスミサが催された。ガザ地区でのイスラエル軍とイスラム組織ハマスの戦闘を受け、クリスマスツリーの展示など多くのイベントは中止。人々は静かに教会に集い、戦争の即時終結を祈った。
パレスチナ人は9割以上がイスラム教徒だが、約1割のキリスト教徒がいる。例年、クリスマスイブは各地のキリスト教徒がベツレヘムに集結し、イエスの誕生を祝ってきた。だが今年、ベツレヘム当局などは「ガザで多くの人が殺害されている中、クリスマスを祝うわけにいかない」として、宗教行事以外のイベントは中止した。
ルーテル・クリスマス教会では、がれきの中に赤子のイエスを置いたモニュメントを展示した。ガザの戦争をテーマにしており、マンサー・イサーク牧師(44)は「ガザで虐殺が起きているのに、国際社会は沈黙を続けている。イエスの幼い頃と同様、ガザの子供たちが厳しい状況に置かれていることを伝えたかった」と話す。同教会の礼拝では、集まった数十人の市民がガザの平和を祈り、火をともしたろうそくをモニュメントに供えた。
ベツレヘムでは戦争が始まった10月7日以降、ほぼ観光客がいなくなった。約7割の収入を観光に頼る同市にとっては、大きな打撃だ。土産物店を営むラミオ・ジャッカマンさん(38)も10月以降、店を閉めざるを得なくなった。「街はまるでゴーストタウンだ。ガザの悲惨な状況を考えれば、クリスマスを祝う気にもなれない」と顔をしかめる。
イスラエルが軍事占領を続ける西岸では、戦争開始後、イスラエル軍がパレスチナ人の暴動を警戒し、都市間の移動を制限。イスラエルで働いていた約15万人の労働者も、多くがイスラエルへの入境を許可されず、無収入の状態だ。ジャッカマンさんは「西岸では戦争が占領を強化し、経済を悪化させている。イスラエルへの憎しみは増すばかりだ」と声を荒らげた。【ベツレヘムで三木幸治】