政令市初の「車いす市議」として知られ、今春引退した元名古屋市議の斎藤亮人(まこと)さん(63)が、支給された「費用弁償」の相当額を、約20年越しで市に返還した。市議時代は制度を批判しながら、返還は認められなかっただけに「ようやく胸のつかえが取れた。市の福祉事業に使ってほしい」と笑顔を見せた。
費用弁償は、本会議や委員会に出席すると、議員報酬とは別に交通費や資料作成費として日額で支払われていた。名古屋市議会では1964年に3000円で始まり、91年に1万5000円、2003年から1万円となり、10年に廃止された。
斎藤さんは02年3月の市議会で「政務調査費もあり二重取りで不必要」として見直しを訴えた。市への返還を試みたが、公職選挙法で禁じる寄付行為に当たる可能性があるとしてかなわなかった。
斎藤さんは3歳で脊髄(せきずい)の病気にかかり、下半身まひとなった。90年の市議補選で初当選し、7期25年にわたって障害者福祉に尽力してきた。今春の市議選には出馬しなかった。
引退したことで、01~09年度の費用弁償など計787万1000円を市に寄付した。9日、感謝状贈呈式が市役所であり、斎藤さんは「長年市に返したかった。引きこもり支援やフードバンクなどに使ってほしい」と話し、平松修・健康福祉局長は「市の福祉事業に生かしたい」と感謝した。【川瀬慎一朗】