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屋久島沖で領海侵入繰り返す中国測量艦 海軍の狙いは


 縄文杉で知られる人気の観光スポット、鹿児島県・屋久島の沖合で、中国海軍の艦艇による領海侵入が相次いでいる。侵入した中国艦艇の大半は、海中調査の能力を備えた測量艦だった。沖縄県・尖閣諸島周辺では、中国海警局所属の公船が領海侵入を繰り返しているが、屋久島沖の海軍艦艇は目的が異なるようだ。中国側の狙いを探った。

 「ここは日本の領海です」。2月12日未明、領海に入った中国海軍の測量艦1隻に対し、追跡する海上自衛隊の艦艇がスピーカーから中国語でそう呼びかけた。測量艦は午前0時50分ごろ屋久島南の接続水域を北に進み、同2時半ごろに屋久島南西の領海に入った。上空からは海自の哨戒機2機が警戒を続けた。

 防衛省(東京都新宿区)にある自衛隊の「中央指揮所」では、当直の隊員が測量艦の航跡を表示したモニターに目を光らせていた。海自の艦艇を指揮する自衛艦隊司令部(神奈川県横須賀市)でも監視するなか、測量艦は領海内を北西へ航行し、同4時10分ごろに口之島北東の領海から出て東シナ海へ抜けた。

 防衛省によると、中国海軍の艦艇による領海侵入は2004年11月に初めて公表され、23年2月のケースを含めて過去10回ある。うち7回は21年11月以降に集中しており、いずれも測量艦が屋久島・口之島間を航行した。

 測量艦は海中で音波を発射し、反射した音波を分析することで海底地形や水深を測定するほか、潮流や海水温を調べる能力がある。複数の防衛省幹部は「収集したデータで海図をつくり、潜水艦の太平洋への航行ルートにしようとしているのではないか」とみる。台湾有事となった場合、中国は潜水艦を太平洋に展開し、東側から接近する米空母をけん制する構想があるとされる。

 ではなぜ、数ある航行ルートのうち屋久島・口之島間にこだわるのだろうか。海自横須賀地方総監を務めた元海将の渡辺剛次郎氏は「屋久島沖は黒潮の経路上にあたるため、潜水艦が探知されにくい条件がそろっている」と指摘する。潜水艦の位置を知るにはスクリュー音などを手がかりとするが、屋久島沖は黒潮が通過することで潮流が強く、海水温の分布が一定とならず、温度の変化が起きやすい。海中で音が伝わる時には海水温の影響を受けるため、屋久島沖では音の伝わり方が複雑になるという。

 近年、中国艦艇は沖縄本島・宮古島間の排他的経済水域を通過し、東シナ海と太平洋を行き来することが多い。この海域は黒潮の経路上ではなく、海水温や潮流の変化が比較的小さいという。渡辺氏は「沖縄本島・宮古島間はさまざまな艦艇が航行しているのに屋久島沖は測量艦ばかり。屋久島沖は測量の対象だという中国の意図を感じる」と話す。

 沿岸国の主権が及ぶ領海は沿岸約22キロ内、接続水域は領海の外側約22キロ内を指す。国連海洋法条約は、軍艦であっても敵対的行動を取らなければ「無害通航」として他国の領海を航行することを認めているが、測量活動は「無害通航」とみなされない。ただ、測量艦が屋久島沖を航行したのは大半が夜間で、「暗くて活動内容をはっきり確認できない」(防衛省関係者)という。

 一方、尖閣周辺では、中国海警局の公船が領海や接続水域での航行を常態化させている。22年に確認された接続水域での航行は過去最多の336日に上る。領海への連続侵入時間は23年4月、80時間を超えて過去最長を更新した。尖閣の領有権を主張する中国は、既成事実を積み重ねて現状変更を図る狙いがあるとみられる。

 政府関係者によると、屋久島沖では22年秋、中国の民間測量船の航行も確認された。民間船であっても収集したデータが中国海軍に渡る可能性があるとみて、防衛省は警戒を強めている。同省幹部の一人は「季節ごとの水温変化や潮流のデータを集めるため、領海侵入は今後も続くのではないか」と語る。【内橋寿明】

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