「難民の命を危険にさらしかねない」と批判される出入国管理及び難民認定法(入管法)改正案の廃案を求めるデモが27日、川崎市で行われた。参院で審議が続く中、約300人の市民らが川崎駅東口などを巡るコースを歩き、軽快な音楽を背景にラップ調で「外国人をいじめるな」と声を上げるなどした。
法案は難民認定申請3回目以降の人の強制送還を可能にする条文を含むため「難民を危険地に送らない難民条約の原則に反する」と批判されている。デモを呼びかけたのは川崎市多摩区の大学生、伊礼悠花さん(21)。7日に杉並区で行われた入管法案反対デモなどで「帰れば殺される」と訴えるミャンマーのロヒンギャ難民、ミョーチョーチョーさん(37)の切実な声を聞き「川崎でも声を上げたい」と思い立った。
杉並のデモなど各地で法案反対活動を展開しているNGOで非正規滞在外国人を支援している「反貧困ネットワーク」の瀬戸大作事務局長に相談。川崎市内で在日コリアンなど「移民の先輩」が多く住む桜本地区を訪れ、地元住民から助言と激励を受けて開催にこぎ着けたという。伊礼さんは「川崎には差別と戦うかっこいい大人がたくさんいると知ってほしい」と話した。
参加者らは「違法な人間などいない」「誰も殺すな」などと思い思いのメッセージ書かれたプラカードも掲げて行進。第二次世界大戦中、ナチスドイツの迫害を逃れたユダヤ難民に「命のビザ」多数を発行して命を救った日本の外交官、杉原千畝に敬意を示したり、「友達守ろう」「難民いじめる政治家いらない」といったコールも行われた。
デモ開始前のスピーチでは川崎で生まれ育ったラッパーのFUNIさん(40)らがあいさつ。「この年になり新しい命をさずかって、皆さんの応援でようやくこうした場で声を上げてもいいと思えるようになった」と幼い娘を抱いてあいさつすると、聴衆から拍手と声援が上がった。川崎市立ふれあい館の崔江以子(チェチェ・カンイジャ)さんは取材に「川崎では多文化共生が行われてきた。この地からこそ、ともに生きる声を上げたい」と話した。【和田浩明】