バルト3国・リトアニアのランズベルギス外相が17日、東京都内で毎日新聞の取材に応じた。北大西洋条約機構(NATO)加盟国として、7月に首都ビリニュスで開くNATO首脳会議に岸田文雄首相が出席することを「強く願っている」と述べ、日本とNATOの連携強化に期待した。岸田首相は昨年スペインを訪問した際、日本の首相として初めてNATO首脳会議に出席している。
ランズベルギス氏は、世界の首脳・閣僚らが安全保障問題を話し合う「ミュンヘン安全保障会議」の関連会合のために来日した。
台湾情勢などを念頭に、アジア太平洋の安保環境に変化が起きれば「NATOも影響を受ける」と指摘。NATOが東京に事務所を開く方向で調整していることについて「日本の担当者と毎日情報交換できるのは実用的で重要だ」と述べて「強い支持」を表明した。
バルト3国はかつてソ連に併合された歴史から、ロシアによるウクライナ侵攻に、とりわけ危機感を強めている。ランズベルギス氏は「長期的な平和のためにはウクライナは戦って勝たなければならない。そうでなければロシアは将来、次の段階の侵略を起こすだろう」と警告。ウクライナへの支援継続を呼びかけた。また、ウクライナの戦闘機調達を幅広い国々が支える「国際的な連合」を英国とオランダの両首相が呼びかけたことを「良いステップだ」と歓迎した。
リトアニアは2022年に台湾の代表機関を首都に開設するなど、中国と距離を置き台湾との関係を重視している。19日から広島で始まる主要7カ国首脳会議(G7サミット)に向けては、対露制裁の強化に加え、貿易での中国依存を減らすための議論を期待した。
リトアニアは1991年に旧ソ連から独立した。ランズベルギス外相は、独立運動を率いた当時の最高会議議長、ビータウタス・ランズベルギス氏の孫。ビータウタス氏の証言と記録映像で独立の過程を描いた映画「ミスター・ランズベルギス」が、昨年日本でも公開された。
90代になった祖父は今も健在で、よく政治についてのアドバイスをもらい「昨日も3回電話してきた」という。リトアニアの独立当時を「父の肩に乗って(独立を求める)集会に参加し、群衆の前で話す祖父を見ていた」と回顧し「ソ連の戦車の音を今でも覚えている。(当時の経験が)自由は当たり前ではないという理解を私に与えてくれた」と語った。【五十嵐朋子】