気象庁は12日、今夏までにエルニーニョ現象が発生する確率が高いと発表した。実際に発生すれば4年ぶりとなる。第一生命経済研究所の永浜利広首席エコノミストは「エルニーニョによる農産物価格の高騰や消費の落ち込みで、経済、金融市場への影響が懸念される」と分析している。
エルニーニョは南米ペルー沖で海面の水温が平年より高い状態が続く現象。数年おきに発生し、世界各地で豪雨や干ばつなどの異常気象を引き起こす。今年発生すれば2018~19年以来となり、少なくとも秋まで続くとみられる。
影響としては日照時間が短い冷夏や梅雨明けの遅れを引き起こし、野菜や果物の生育の遅れや価格高騰を招く可能性がある。1993年にはエルニーニョなどに伴う日照不足でコメが不作となり、政府はタイ米の緊急輸入に踏み切った。
一方、豪州や南アジアなどの穀倉地帯では高温による干ばつが発生しやすくなるため、広範囲にわたって生産量が減る恐れがある。日本が輸入に頼る小麦やトウモロコシなどの価格が上昇すれば、食料品価格の高騰に拍車がかかり、家計を圧迫する恐れもある。
新型コロナウイルスの行動制限が緩和され、本格的な景気回復が期待されているが、永浜氏は「エルニーニョによって夏場のレジャーを中心に消費が抑制されるだろう」と懸念する。夏物の衣服や飲み物などの売り上げの落ち込みも避けられそうにない。永浜氏は「30年ぶりの賃上げの好循環を打ち消すほどではないが、景気の足を引っ張る可能性がある」と指摘する。【藤渕志保】