ノーベル経済学賞受賞者のジョセフ・E・スティグリッツ米コロンビア大学教授が11日、国会内で講演し、日本が目標として掲げている2%の物価上昇率について「2%という数字には科学的根拠がない。中央銀行は2%に過剰に固執してはいけない」と主張し、世界的な賃金上昇などの流れを踏まえて3%のほうが適当だとした。自民党の「責任ある積極財政を推進する議員連盟」で話した。
さらにスティグリッツ氏は「緊縮財政は正しくない。経済成長につながらない」と指摘。炭素税の導入など、脱炭素化社会を目指すグリーントランスフォーメーション(GX)やデジタル化による投資の活性化策を提案した。製造業中心の日本の産業構造をよりサービス産業を軸にした経済へ移行させていくことの重要性を説いた。スティグリッツ氏は第2次安倍晋三政権以降、経済政策「アベノミクス」について安倍氏と意見交換してきた。
講演には、これまで同氏と交流してきた本田悦朗・元内閣官房参与も出席し、「日本人はデフレマインドもあり、2%の達成もなかなか簡単ではない」との見方を示した。現状で2%を超えているのは、値段が上がっている海外製品による「輸入インフレ」が要因だと説明した。【藤渕志保】