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旧国鉄や有田焼窯元で愛され 王将戦第6局の舞台・佐賀に息づく将棋


 将棋の第72期ALSOK杯王将戦七番勝負第6局(毎日新聞社、スポーツニッポン新聞社主催、佐賀県上峰町、起立工商DMO共催、ALSOK特別協賛、囲碁・将棋チャンネル、立飛ホールディングス、森永製菓協賛)が11、12の両日、上峰町の大幸園(たいこうえん)で指される。名人初挑戦を8日に決めたばかりの藤井聡太王将(20)が初防衛を果たすのか、羽生善治九段(52)が3勝3敗のタイに戻すのか。注目を集める対局地・佐賀は意外と将棋の盛んな土地柄らしい。駒音響く各地を訪ねた。

 「パチッ」「パチッ」。佐賀県鳥栖市の住宅街にある鳥栖将棋クラブでは日曜の夕方、平屋の6畳間に集った子供や大人たちが真剣な顔つきで将棋盤をはさんで向かい合っていた。指導にあたるのは日本将棋連盟鳥栖支部の岩村福雄支部長(72)だ。岩村さんは、クラブ以外でも、招かれた将棋教室など市内5カ所で年間計約100人に将棋を教えている。

 岩村さんは、かつてあった国鉄の鳥栖機関区に将棋好きが多いことで市内に広まったという話を聞いたことがあるという。支部は1975(昭和50)年設立で、鳥栖将棋クラブは昭和40年代にはあったというが「藤井ブーム」でさらなる裾野の広がりを感じている。上峰町から通う小学2年の堀口祥悟さんは、友人に誘われ将棋を始めて1年に満たないが「お父さんにも勝てるようになってきた。目標は大会で優勝すること」と話した。

 地域に息づく伝統文化とのつながりもある。日本の磁器発祥の地・有田町。1894(明治27)年設立の老舗窯元「深川製磁」は、会社内に日本将棋連盟の支部を置く九州では珍しい存在だ。本店裏手の工房休憩室には60年の歴史を誇る「日本将棋連盟深川製磁支部」の大きな看板がかかっている。

 支部メンバーで染め付けの課長、梶原清さん(60)に由来を聞いた。かつて窯をたく際に2人が組んで火の番をしたが、その空き時間に将棋を指していた。会社と関係のあった地元のアマ強豪が連盟幹部とも知り合いだったことが縁になり、社内に支部ができたという。

 現在は45分の昼休みの間に対局している。メンバーは10人ほどだが、昔は50人はいたという。支部長で工場長の安永誠史さん(54)は「以前は入社後、将棋部に入るのが暗黙のルールだった。自分はここで、社内の上下関係も仕事の技術も勉強させてもらった」と振り返る。また、焼成や絵付けなど職場は分業制のため、普段は交流がない人とのいいコミュニケーションの場にもなっているという。

 本店にある、一般には非公開の一室に、窯元ならではといえる棋士たちの“足跡”が残っていた。当地を訪れた際、揮毫(きごう)した花生けだ。初代王将でもある升田幸三・第四代名人が「念力」、大山康晴十五世名人が「王将」、中原誠十六世名人が「無心」、羽生九段は「洗心」――。それぞれの言葉が興味深い。

 案内してくれた副社長の深川真樹生さん(44)が、とっておきの話をしてくれた。2016年12月、当時四段だった藤井王将はプロデビュー戦で、加藤一二三九段と対局した。将棋会館(東京都渋谷区)の対局室の床の間に置かれた、赤富士などをあしらった花生けは深川製磁製だという。深川さんは「数々の対局を見守っていることになり、光栄だし励みになる。ぜひ藤井さんにも有田へお越しいただきたい」と話した。【西脇真一】

   ◇

 佐賀県出身でただ一人の将棋のプロ、武富礼衣(たけどみ・れい)女流初段(23)の話 平成の王者と令和の王者が戦う、ファンが待ち望んでいた夢の対決。歴史に残るシリーズで、こんな大きな対局に身近に接することができるのは、佐賀出身の棋士としてうれしい。将棋は本当に楽しくておもしろい競技。また、相手と一緒に次の成長に向けて勉強する姿勢も身につく。将棋を指して得た仲間は、ライバルであり友人でもある。仲間を増やして切磋琢磨(せっさたくま)してほしい。福岡市には日本将棋連盟による少年少女と女流棋士養成機関の九州研修会もでき、自分の意志と家族の協力があれば、さらに上を目指せる環境にもなっている。

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