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「立ちんぼ」の女性が消えた 年末、歌舞伎町で起きたこと


 東京・新宿、歌舞伎町の路上にスマートフォンを手に立ち続ける女性たちがいる。辺りが暗くなった頃、どこからか来て公園の周りに立ち、自分の体を買う客を待つ。歌舞伎町2丁目にある新宿区立大久保公園の周りに集うのは、「立ちんぼ」と呼ばれる売春女性たちだ。

 2022年の暮れ、その姿が一斉に消えた。連日何人もが警察に連れて行かれ、「路上で客を取る女性が年内で一掃される」といううわさが流れたからだ。

 警視庁は12月、歌舞伎町で集中的に売春行為を取り締まった。捜査関係者は「2週間、明らかに路上で客待ちをしていた女性を一斉に検挙した」と明かす。背景には「売春が減らないだけでなく、撮影目的のユーチューバーややじ馬が増え、一帯の乱れが激しくなったこともある」という。

 大久保公園周辺ではこの1年、カメラやスマホを手にして歩く男性が増えた。隠し撮りをする者も多く、配慮ない撮影者と映された女性の間で起きるトラブルは後を絶たない。

 路上に立ち始めて3年になるユズ(仮名、27歳)は「ユーチューバーとか警察とか増えて本当に嫌だけど、金ないんだもん」と言う。客の相場は「別1」。相手が支払うホテル代とは別に1万円を意味する。

 23歳だった19年12月、キャリーケース一つで北海道から上京した。ツイッターで知り合ったホストを頼り、歌舞伎町に立つようになった。「イケメンと飲むのが好き」で、ホストクラブに行くのが楽しくて仕方なかった。そのために体を売った。

 だが、1年ほど前からそんな生活に不安を覚えるようになった。ネットカフェ暮らしにも疲れた。支援団体の相談所に出入りし「今のままずっといようとは思わない。自分の家に住みたい」と口にした。実際、そんな生活から抜け出そうとしたこともある。

 客から金銭を得て体を売る行為は売春防止法で禁じられている。買う側への罰則はなく、取り締まりは主に女性たちが対象になる。警視庁によると22年の1年間、歌舞伎町で51人を逮捕したという。

 路上に立つのは20代前半を中心に10~40代。数日でやめる女性もいれば、何年もいるケースもある。親の暴力から逃げた末に。ホストクラブで使う金を稼ぎに。昼の仕事だけでは食べていけないシングルマザー。事情はそれぞれだが「この生活を続けたいわけじゃない」という思いを抱える女性は多い。

 年の瀬、女性の姿が消えたのは数日間だけだった。年末年始も公園の周囲では多くの人が道際に立つ女性に横目を向けた。暴行や金銭トラブル、性病感染、望まない妊娠――。リスクは多い。行政や警察、数々の民間支援団体は手を差し伸べてもいる。それでも、彼女たちはこの街で夜を過ごしている。【春増翔太】

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