今春にも開始される東京電力福島第1原発の処理水海洋放出に関し、韓国の研究者が16日、韓国周辺海域でのシミュレーション結果を発表した。放射性物質トリチウムの濃度上昇は、調査対象の海域で、現在の平均濃度の10万分の1以下にとどまり、「検出が難しいほど低い」と指摘した。
韓国政府は処理水の海洋放出について「科学的で客観的な根拠に従い、合理的に、透明性を持って行われなければいけない」とコメントしてきた。周辺海域での放射性物質の濃度にほぼ変化がないという韓国側のシミュレーション結果は、日本政府が韓国政府に海洋放出への理解を求めるうえでの材料となりそうだ。
シミュレーションは韓国海洋科学技術院と韓国原子力研究院所属の研究者が実施。日本側がトリチウムの年間放出量の上限とする22兆ベクレルを10年間放出した場合を想定した。シミュレーションでは、放出開始の4~5年後から本格的にトリチウムが流入した。ただ、その濃度は放出開始から10年後でも1000リットルあたり約0・001ベクレルの上昇にとどまるという。【ソウル渋江千春】