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視覚障害者にメイク 「なりたい自分」見つけて 社会参加を後押し


 日常生活にさまざまな変化をもたらしたコロナ禍。マスク生活が長引き、「顔が隠れるので」と化粧をしなくなった人も多いのでは。しかし、化粧には意欲を高める効果があるとされ、閉じこもりがちな視覚障害者にメークを教える講座も開かれている。目の不自由な人のメークを巡る現場を取材し、化粧がもたらす効果について考えてみた。【山口桂子】

 「指先にパール粒くらいの量を出してください。顔の中心から外側に円を描くように、下地をつけていきます」

 福岡市南区にある視覚障害者専用の特別養護老人ホーム「松月園」で2022年10月、化粧品メーカーのスタッフがメークの仕方を教える講座が開かれた。弱視や全盲など60~90代の女性入所者ら7人が参加。化粧水や乳液を使ったスキンケアの仕方から、ファンデーションやほお紅などの化粧品の扱い方まで順に説明を受けた。講座で紹介された化粧品は、押すと定量が出る化粧水や、散乱する心配が少ない塗るタイプのアイシャドーで、参加者は手で触れて確認しながら試していた。

 主催した資生堂(東京都)は、目の不自由な人にもメークの楽しさを感じてもらおうと、視覚障害者団体など向けに実践的なメーク講座を開催している。担当者は「化粧をすることで気分が高揚して外出する意欲が出たり、身だしなみを整えることで生活にメリハリが出たりする効果がある」と話した。

 松月園では、コロナ禍で利用者の外出機会が減ったことから、「化粧をきっかけに、何かをしたいという意欲につながれば」と講座を企画。参加者からは、顔に触れて「気持ちがいいね」と笑みがこぼれる場面があった一方で、「我流でやっていたけれど、こんなに化粧って難しいのね」と率直な感想も聞かれた。

 日常生活でメークを取り入れている人にも話を聞いた。福岡市東区の片山由美子さん(63)は網膜色素変性症で失明し、今は娘家族と暮らす。視覚障害者団体で活動する中で、人前に出る機会が増えた40代のころから化粧をするようになった。コロナ禍のマスク生活では目元を明るくしたいとアイシャドーを取り入れたところ、小学1年の孫娘から「ばぁばの目がつやつやしている。お化粧しているね」と言われた。「小学1年生でも気づいたことに、驚いたのと同時にうれしかった」

 一方で「化粧をしなくなった」と話すのは、福岡県筑紫野市の澤村富士子さん(65)。以前から興味があったメーク講座を受けに2015年、大阪に計7回通った。先天性の全盲で、憧れていたメークが一人でできるようになったことも楽しかったが、何よりも「娘が『お母さん、きれいになった』と喜ぶ姿がうれしかった」という。しかし、その後は肌荒れに悩み、化粧をやめた。「見劣りしているのでは」と考えた時期もあったが、「ありのままの自分」でいられることで楽になり、周囲への接し方も変わった。澤村さんは「メークのおかげで多くのことに気づけたのが一番大きな収穫」と語った。

 目の不自由な人へのメークを後押しする活動に取り組む、日本ケアメイク協会(群馬県高崎市)の山岸加奈子理事長(43)も全盲の当事者。自身の経験からも化粧を通じ、できないと思っていたことができるようになり「顔を上げて社会参加できるようになった」と語る。「化粧をきっかけに『なりたい自分』を見つけることにつなげてほしい」

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