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レコード復権も「レコード針」メーカーの先行きが不透明なワケ


 アナログレコードの人気が復活している。欧米ではすでにCDの売り上げを上回っており、日本でも生産数が急増し、2022年は200万枚を超えた。群馬県千代田町でレコードのカートリッジ、いわゆる「レコード針」を作り続けてきたメーカー「中電」にも波及し、国内需要がじわりと増えているという。同社の斎藤力也社長は「一時的なブームに終わることなく、レコードを楽しむ文化が再び根付いてほしい」と話す。【庄司哲也】

 「レコードは音楽を伝える記憶媒体としては、容量が少な過ぎて適しているとは思えない。だが、楽曲を1曲ずつ購入するストリーミングサービスとは違い、10曲ほどの楽曲が収録されたアルバムはどの順番で作品を聞かせるか、作り手の意図を感じさせ、メッセージ性が高い」。斎藤社長はレコード鑑賞の利点をこう語る。

 音楽鑑賞の方法は1980年代にレコードからCDへと置き換わり、現在はストリーミングサービスへと移行。レコードは完全に姿を消すかと思われたが、2010年代以降、じわじわと人気が復活。日本レコード協会の統計によると、21年は生産量が前年比74%増の190万7000枚、22年は同12%増の213万3000枚。生産額は同84%増の39億円、同11%増の43億3600万円と大幅に伸びた。

低迷期に会社設立

 中電はレコードの売り上げが低迷していた96年に設立。前身は旧三洋電機の関連会社のカートリッジ部門だった。CD時代になり、切り捨てられようとしていた部門を先代社長の故樽屋毅さんが買い取った。樽屋さんは部品を作る協力会社がデジタル化に移行できないことを見過ごせず、カートリッジを必要とする人に届けるため新会社を立ち上げたという。

 設立当時の経営を支えたのは中国、台湾向けの輸出と、ターンテーブルを操りスクラッチ音を鳴らすDJ人気だった。だが、中国で中電のカートリッジに似た安価な製品が出回るようになり、今では中華圏への輸出はほぼゼロに。OEM(相手先ブランドによる受託生産)が主力だが、18年に立ち上げた自社ブランドが輸出の大幅減によるピンチを支えた。

 「ストリーミングの時代になったが、気に入った作品は所有したいという欲求が生まれるようだ」と、斎藤社長はレコード復活の背景を分析する。90年代半ば以降に生まれた「Z世代」の若者がストリーミングで作品に触れ、不便で手間はかかるが、よりアーティストに近づこうとレコードを手に取る。約30センチ四方のレコードジャケットには、アーティストの作品への思いなどがつづられた歌詞カードなどが収められており、ファン心理をくすぐるというのだ。

 さらに追い風となっているのが、松原みき「真夜中のドア~stay with me」(79年)などに代表される70~80年代の日本のポップソング「シティーポップ」の世界的な人気。山下達郎、竹内まりやといったアーティストたちの作品に再び注目が集まり、当時のレコードへの需要が高まっている。また、あいみょんや宇多田ヒカルら現在の人気アーティストたちもレコードの新譜をリリースしている。

 一方で、カートリッジ需要の先行きは不透明という。斎藤社長は「ただレコードを聴くだけならば1万円前後の安いレコードプレーヤーがあり、カートリッジの需要は伸びない。どこの家庭にもステレオがあった昔のようにレコードの音を楽しむような音楽鑑賞のスタイルが日常的になることが必要」と話す。

レコードカートリッジ 

 一般的にレコード針と呼ばれる部品。針がレコードの溝をなぞることで振動を電気信号に変換させる。MM(ムービング・マグネット)型とMC(ムービング・コイル)型の2種類に大別され、中電が作るのはMM型。MM型を生産するメーカーは現在、数社に限られている。

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