北大西洋条約機構(NATO)加盟を目指すスウェーデンに、新たな障害が浮上した。NATO加盟国
トルコは、加盟承認の条件として、スウェーデンに逃げたクルド人亡命者の引き渡しを求めてきた。反発するスウェーデン在住クルド人の団体は、
トルコのエルドアン大統領に似せた人形を絞首刑にするパフォーマンスで抗議、
トルコを激怒させている。 ◇責任を追及 イタリアのファシスト、ムソリーニは第2次大戦末期、パルチザンに捕まって処刑され、遺体はミラノの広場につり下げられた。クルド人の団体は、ストックホルム市内でエルドアン氏に似た人形をぶら下げて撮影し「独裁者の末路は歴史が示す」と書き込んだ動画を拡散させていた。 これに怒った
トルコ政府は12日、スウェーデン大使を呼び出して猛抗議。
トルコのチャブシオール外相は13日、スウェーデン政府に対し「責任を逃れることはできない」と警告した。 動画に関しチャブシオール氏は「テロ組織の支援者たちがスウェーデンのNATO入りを妨害しているのだ」と明確に加盟問題と関連付けて非難した。スウェーデンに対し「こういう連中に屈服するのか、それとも約束を守るのか」と迫り、クルド人の送還を急ぐよう求めた。 ◇「破壊工作」 スウェーデンのクリステション首相は13日、テレビ出演した際「民主的に選ばれた外国の指導者を死刑にするまねごとは非常に深刻だ」と苦言を述べた。一方で「NATO加盟に対する破壊工作だ。こういうのはスウェーデンの安全保障にとって危険だ」と批判、加盟問題への影響を認めた。 エルドアン氏は15日、加盟問題に関し「テロリストをわれわれに引き渡さなければ、どんなことがあっても
トルコ国会は通せない」と繰り返した。「
トルコ国会を通すには、まず100人を超える引き渡しが必要だ。およそ130人のテロリストを引き渡すのだ」と要求した。 ただ、スウェーデン検察は16日、クルド人団体に対する告発について、AFP通信に対し「予備的な捜査すら始めることはないと決定した」と述べた。スウェーデン紙アフトンブラデットの取材に応じた検察官は、名誉毀損(きそん)と訴えを受けたが「要件を構成できるとは考えられない」と説明。
トルコの怒りに火を注ぎそうだ。 【時事通信社】 〔写真説明〕
トルコのチャブシオール外相=10日、プレトリア(AFP時事) 〔写真説明〕スウェーデンのクリステション首相=3日、パリ(AFP時事) 〔写真説明〕
トルコのエルドアン大統領=2022年12月、アンカラ(AFP時事)
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