新聞のデジタル化加速＝紙には付加価値―ＷＳＪ擁する米ニューズ首脳

　【ニューヨーク時事】米新聞・出版大手ニューズ・コーポレーションのロバート・トムソン最高経営責任者（ＣＥＯ）は、電子版で購読者数を増やせる余地は大きいとして、傘下の米紙ウォール・ストリート・ジャーナル（ＷＳＪ）などで、開発や販促のための経営資源の多くをデジタル分野にシフトさせていることを明らかにした。 　一方で「特定の層は紙媒体を非常に好んでおり、（電子版よりも）高い料金を払ってくれる」と述べ、付加価値の高い紙媒体で読む読者を「変わらずに満足させたい」と強調した。２日までにニューヨークの本社で時事通信とのインタビューに応じた。 　トムソン氏は、米欧規制当局がグーグルなどＩＴ大手によるデジタル広告の配信をめぐり、競争を阻害した疑いがあるとして調査を進めていることについて、「規制当局が何を見つけるのか、調査を注視している」と言明。ＩＴ大手がインターネット上の影響力を背景に広告取引を有利に進めることで、広告媒体としての新聞や出版社が不利益を被ることに警戒感を示した。 　トムソン氏はその一方、「コンテンツ（の提供）という点では、グーグル、フェイスブック（現メタ）とも良好な関係だ」と述べた。ニューズは２０２１年にグーグルやフェイスブックなどと、記事を提供する見返りに利用料を受け取ることで相次いで合意しており、社会で存在感を強めるＩＴ大手に是々非々で対応する姿勢を示した形だ。 　米国では、連邦最高裁が人工妊娠中絶の憲法上の権利を否定する判断を下したことで中絶賛成派と反対派が鋭く対立するなど、社会の分断化を懸念する声が強まっている。トムソン氏は「社会の二極化は非常に深刻だ」と憂慮を表明。こうした状況下でのメディアの報道姿勢について、「読者は賢いので、偏った報道だと分かれば信用されなくなる」と語り、「主観的ではなく、客観的であることを目指すのが非常に重要だ」と強調した。　【時事通信社】 〔写真説明〕米ニューズ・コーポレーションのロバート・トムソン最高経営責任者（ＣＥＯ）＝６月３０日、ニューヨークの同社本社