米、中国動向に警戒感＝ロシアの支援依頼めぐり―高官会談７時間

　【ワシントン、北京時事】サリバン米大統領補佐官（国家安全保障担当）は１４日、中国外交担当トップの楊潔※（※竹カンムリに褫のツクリ）共産党政治局員とローマで会談し、ウクライナ侵攻を続けるロシアに対する中国の連携に「深い懸念」を表明した。ロシアが中国に軍事・経済面の支援を要請したとする報道もあり、米国は警戒感を強めている。 　「真剣な７時間で、率直な意見交換だった」。米政府高官は１４日、会談の様子をこう説明した。サリバン、楊両氏は昨年１０月に米中関係をめぐりスイスで約６時間会談したが、今回はウクライナ侵攻という新たな問題も加わり、激しいやりとりが交わされたもようだ。 　米メディアは会談前、ロシアが中国に軍装備品や経済援助を求めたと報じた。サリバン氏はＣＮＮテレビで、中国の動向を「注視している」と述べ、ロシアに加担しないよう中国をけん制。楊氏との会談で米側の懸念を直接伝えたとみられる。米当局者からは、対ロ支援が「重大な結果を招く」（サキ大統領報道官）と中国に警告する発言が相次いでいる。 　英紙フィナンシャル・タイムズ（電子版）は１４日、中国が対ロ軍事支援を示唆したという情報を米国が同盟国に外交公電で知らせたと報道。中国外務省の趙立堅副報道局長は１５日の記者会見で「完全にうその情報」と否定した。楊氏は会談で「事実でない情報をまき散らし、中国の立場をゆがめ、泥を塗る言動に断固反対する」と強調。報道内容を否定し、米側に強く反発した形だ。 　しかし、米側の懸念には理由がある。中国の習近平国家主席とロシアのプーチン大統領は２月４日、北京で会談し、対米共闘の思惑から蜜月関係を誇示。共同宣言では北大西洋条約機構（ＮＡＴＯ）拡大への反対を明記し、「両国の友好は果てしなく、協力にタブーはない」とうたった。 　中国はロシアにとって最大の貿易相手国で、趙氏は「中ロは引き続き正常な貿易協力を行う」と断言。一貫して対ロ制裁に反対し、ロシアの軍事行動を「侵攻」と呼ぶことも避けている。楊氏は今回の会談でもロシアを代弁し、「（ロシアの）合理的懸念に応えるべきだ」と訴えた。 　一方、中国はウクライナとも友好関係にあり、立ち位置に苦慮している。国際社会で対ロ非難が強まる中、これまでの突出したロシア寄りのスタンスを調整しているとみられ、他国と共に仲裁に協力する姿勢をアピールし始めた。楊氏は「中国は各国の主権や領土保全を尊重するよう主張している」とウクライナを擁護した上で「中国は和平協議に尽力する」と語る。ただ、具体策は明らかにしていない。 　中国には協力姿勢をちらつかせて、対米関係改善の糸口をつかむ思惑もありそうだ。楊氏は「今の国際情勢において、中米の対話・協力の強化、不一致の管理、衝突・対抗の回避は、両国や世界の人民の利益に合致する」と米側に秋波を送った。　【時事通信社】 〔写真説明〕サリバン米大統領補佐官（国家安全保障担当）＝２月１１日、ワシントン（ＡＦＰ時事） 〔写真説明〕中国の楊潔※（※竹カンムリに褫のツクリ）共産党政治局員＝２０１８年１１月、米ワシントン（ＡＦＰ時事）