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揺れるスリーマイル島=「原発回帰」に危機感―事故の教訓、福島に継ぐ・米


 世界を震撼(しんかん)させた1979年の米スリーマイル島(TMI)原発事故。原発の安全性に課題を突き付けながら、最後まで運転していた1号機が2019年9月に停止した。エネルギー安定確保と地球温暖化対策の観点から欧米で「原発回帰」の動きが出る中、見えない放射能の恐怖を体感した住民らの思いは揺れている。  ◇住民の安全無視  東部ペンシルベニア州の州都ハリスバーグの南東に位置するミドルタウン。いてつく寒さが身にこたえる2月上旬、町を流れるサスケハナ川沿いを車で南下すると、右手の中州にTMI原発のシンボルとなっている巨大な冷却塔が姿を現した。白い蒸気が立ち上ったかつての光景は見られない。  「スリーマイル、(旧ソ連の)チェルノブイリ、福島の原発事故の共通点は、迅速で正確な情報の欠如だ」。TMI原発を監視する市民団体代表のエリック・エプスタインさん(62)は言い切った。「政府や電力会社が住民の健康や地域の安全を気にも掛けないと分かったことが事故の教訓だ」と語気を強めた。  炉心溶融事故を起こした2号機から核燃料は取り出されたが、計画では1号機を含めた廃炉作業が完了するのは今から56年後。費用は計23億ドル(約2600億円)を超える見込みだ。エプスタインさんは「福島でも無価値なものに巨額の資金、膨大な時間を費やすことになる。太陽光や風力など再生可能エネルギーへの投資も増やすべきだ」と訴える。  ◇原発見直しに理解  一方、地球温暖化対策が叫ばれる中、欧米では発電時に二酸化炭素(CO2)を排出しない原発を見直す動きが広がる。バイデン米政権は小型モジュール炉(SMR)など、次世代原子炉の開発を支援する方針だ。ウクライナ危機による原油供給不安は、安定エネルギー源としての原発に追い風になるとの見方もある。  元州職員のジョン・ザイアッツさん(69)はTMI原発事故後、避難先の住民に放射能に汚染されるとして避けられた。このため反原発運動にも参加したが「原子力は温暖化対策に役立つと考え直すようになった。原子力産業は地域経済に大きな貢献をしている」と原発回帰に理解を示す。  ◇不安根強く  だが、TMI原発の完全停止後も住民の原発に対する不安はなお根強い。子供の健康被害を心配する母親らを支援する市民団体のジョイス・コラディさん(77)は、次世代原発といえども「放射性廃棄物を出すことに変わりはない」と批判。「原発事故で子供や孫の未来にどれだけ代償を払わなければならないのか」と、原発が増えることに危機感を募らせる。  TMI原発から5キロしか離れていない町に住むパトリシア・ロングネッカーさん(78)は、事故後に一時避難を迫られた。「福島でも原発事故で心に傷を負い、将来に不安を抱える人が多いと思うが、復興への歩みを続けてほしい」と話した。  「原発事故に終わりはない」。エプスタインさんは、福島原発事故からまだ11年しかたたないのに世界各地で原発見直し論が相次いでいることに複雑な思いでいる。「福島の人々には常に政府や電力会社を批判的な目で見てほしい」と語った。 【時事通信社】 〔写真説明〕スリーマイル島原発事故について伝える看板=2月6日、米ペンシルベニア州ミドルタウン 〔写真説明〕取材に応じるエリック・エプスタインさん=2月8日、米ペンシルベニア州ハリスバーグ 〔写真説明〕自宅で取材に応じるジョイス・コラディさん=2月5日、米ペンシルベニア州ミドルタウン 〔写真説明〕スリーマイル島原発関連の新聞記事を説明するパトリシア・ロングネッカーさん=2月8日、米ペンシルベニア州エリザベスタウン
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