多すぎる月経時の経血には婦人科系の病気のリスクがあることは知られていますが、実は婦人科以外の病気が潜んでいる恐れもあります。
産婦人科医の尾西芳子先生に、「過多月経」に潜むリスクについてのお話をうかがいました。
①生理で100円玉より大きい血の塊が出ることがある
②生理で多い日にはナプキンを2~3時間に1回の頻度で取り換える必要がある
③生理が7日以上続く
④夜用・多い日用ナプキンを3日以上使っていたことがある
ひとつ以上当てはまるなら、経血量が多すぎる恐れがあります。
生理は体からのサインが隠れている、健康のバロメーター。
わかりやすいポイントは月経周期や経血量ですが、経血量は他の誰かと比べることが難しいため、月経周期は気にしていても、経血量への意識が低い傾向がみられます。
経血量が異常に多い状態を過多月経といい、10代から40代まであらゆる年代にみられる疾患です。
600万人程度の患者がいると言われていますが、経血量の多さに慣れてしまい、異常を見逃している女性が多いと考えられています。
実際に生理用品の使用前後の重量をはかり、1周期分の月経量を計測した調査では、参加者133名中11名(8.3%)が過多月経 (経血量が140g以上)と分類されました。
しかし、このうち8名は自身の経血量を「普通」と認識。参加者の中で327.6gと最も経血量が多かった女性でさえも、自身の経血量を「普通」だととらえていました。
尾西先生によると、診察の中で自身の経血量の異常に気付いていない女性は多く、初経から量が多いとそれが普通だと思い込んでいる場合もあるそうです。
過多月経が続いたとき、心配される症状のひとつに鉄欠乏性貧血(以下、貧血)があります。
急激な貧血なら症状で気づきますが、徐々に進む貧血は症状が出にくく本人も自覚しにくいという問題が。
動悸や息切れのほか、倦怠感や集中力の低下など、QOLを下げていることもあるのです。
そのひとつが、血が止まりにくくなる「血液凝固異常症」です。
血液凝固異常症と言われる病気はいくつかあり、女性の場合特有の症状として「過多月経」があります。
実際に、過多月経がある女性の13%が、血が止まりにくい病気の中で最も女性患者が多い「フォン・ヴィレブランド病」だったという報告もあります。
フォン・ヴィレブランド病とは、止血のために重要な役割を果たすフォン・ヴィレブランド因子が欠乏または働きが弱いため、血が止まりにくい病気です。
鼻血やあざが多い、過多月経など健常者にも認められる症状が多いため、体質と思いこんで受診に至らないこともあり、未診断患者は約1万人いると推計されています。
過多月経だった場合、治療を受けることで経血量がコントロールできます。経血量が減れば、気持ちも体も、もっと楽に生理期間を過ごせるようになるはず。
最初のチェック項目でひとつでも当てはまる場合は、婦人科を受診して、医師に相談してみましょう。
■産婦人科医 尾西芳子先生 プロフィール山口大学医学部卒。妊娠・出産から、婦人科がんの手術、不妊治療と広く学び現在は都内クリニックに勤務。
「どんな小さな不調でも相談に来てほしい」と女性のすべての悩みに応えることのできる女性のかかりつけ医として活躍する傍ら、雑誌やTVなどでも医療情報を発信している。
【参考】
※尾西芳子先生 オフィシャルブログ
https://ameblo.jp/yoshiko-onishi/
※フォン・ヴィレブランド病.jp
https://vonwillebrand.jp/
※メディカルノート(過多月経について)
https://medicalnote.jp/diseases/%E9%81%8E%E5%A4%9A%E6%9C%88%E7%B5%8C