公開経営指導協会の理事長・喜多村豊氏が、世界を元気にする挑戦者たちと日本の将来について語り合うリレー対談。第14回目は、日本でいち早く人材セキュリティの考え方を提唱し、雇用リスクから企業を守る株式会社企業調査センター代表取締役・藤木仁さんをお迎えしました。
コロナ禍以前よりも増え続けている雇用リスク
喜多村:藤木社長の企業調査センターは、企業専門の調査会社とのことですが、どのようなサービスを行っているのでしょうか?
藤木:例えば情報漏洩や横領、不正行為が疑われる従業員がいないかを調査する「社内調査」や、取引先企業や代表者の反社チェック、税務調査、信用調査を行う「取引先調査」などを行っていますが、昨今、非常に多くのお問い合わせを頂いているのが「採用調査」です。
喜多村:採用調査といいますと、企業がこれから雇用しようと思っている人が不正をしていないか、例えば犯罪歴がないか、学歴を偽っていないかといった調査になるのでしょうか。
藤木:ええ、最終面接の前に候補者全員を調査するケースが多いです。採用するかどうかの判断材料にしていただいたり、企業さんによってはそもそもNGにしている項目あります。とくに金融機関さんなどは破産歴やお金に問題があった人はなるべく採用したくないわけで。
そうした履歴をデータベースで照合するバックグラウンド調査に加えて、弊社では、その人の前職での実績や評判をチェックするリファレンス調査や、SNSで誹謗中傷や問題となる発言を繰り返していないかといった特定調査に力を入れています。
喜多村:SNSによる誹謗中傷であったり、書き込みが炎上するケースは、このところ連日のように取り上げられますね。
藤木:一番人間性が出ますよね、SNSは。とくに誹謗中傷を投稿する人は、公開されているのアカウントでは表向きの良い人柄を出して、それとは別に「裏垢」と呼ばれる中傷専用のアカウントを持っていることが多いんです。全く違う二面性を持っている人ですね。
実際、面接でいい印象だなと思っても、いざ採用した後で大変な目に遭ったという企業はたくさんあります。それで私たちのサービスに興味を持たれるのだと思います。
喜多村:怖いですね。そうしたバックグラウンドチェックが必要とされるようになったのは現代の採用事情とも関係があるんでしょうか?
藤木:やはりニーズが急増したのはコロナ禍以降です。オンラインでの画面越しの面接は、対面の面接と比べて人間性を把握しづらくなるんでしょうね。入社後にいろいろなミスマッチが起きていると聞きますし、そうした時代的な背景はあると思います。
10人に3人もの割合で発覚する、採用候補者の懸念事項
喜多村:非常に興味深いサービスです。アカウントを使い分けている人はどのように特定しているのですか?
藤木:まずはいただいた情報からご本人に関するキーワードで検索していくのですが、見つからなければ、その方と繋がりのある周辺の人間関係から確認していく方法が基本になります。調査報告書には、学歴・職歴・ネット情報・犯罪歴・破産歴・登記情報・反社に関する項目があり、懸念が見つかった箇所に具体的なレポートを記載してお渡ししています。
喜多村:実際のところ、どんな問題のある候補者がいらっしゃるのですか?
藤木:例えば、前職で公務員だった方をリファレンス調査したところ、非常に評判が悪かったんですね。さらに調べると、その方は男性でしたが今とは違う旧姓があることがわかったんです。それで旧姓で調査を進めると、盗撮での逮捕歴があることが判明しました。こうした事例はそれほど多くありませんが100人に1人くらいはあるのではないでしょうか。
喜多村:何か常習性のある犯罪歴の人が保育園ですとか教育関係の職場に入ったりしたら、リスクは大きいですね。
藤木:SNSで多く見つかるのは、差別的な発言や会社の悪口、上司への暴言を繰り返しているようなケースです。留学経験があって高学歴で人脈も多く、表向きは評価が高そうなんですが、SNSでは「ゴミクズは今すぐ死んでほしい」「こんな会社めちゃくちゃにしてやる」というような投稿ばかりだったり。
SNSで仕事の愚痴や会社の悪口を投稿しているような人は、調査の中で3割くらい出てきてしまいます。それから薬物ですね。海外旅行に行った際、マリファナを大量に買った画像をSNSに投稿していたようなケースもあります。
喜多村:承認欲求でしょうか。昔はSNSのようなツール自体なかったので限度を超えることはありませんでしたが。バイト先でのいたずら動画もそうですが、自分が石を投げたことでどんな波紋が起きるのか、先まで想像せずに、今目立てばいいみたいに考えちゃう。
藤木:もちろんそれがその人の全てではないですし、私たち昭和生まれなんて未成年での飲酒喫煙はふつうにあったわけだから、それ自体どうこう言うわけではありません。ただ、SNSに上げるという行為は企業にとって大きなリスクですから「ネットリテラシーに要注意」という報告をさせていただくんですね。 あと、一番多いのは、職歴の部分で在籍期間をごまかすケースです。働いていない期間が長いとイメージが良くないので、その期間を詰めて申告してしまう。軽いウソではありますが、そういう人は早く辞めるというデータもあるため、慎重になっている企業は多いです。
人材に対するセキュリティ意識を欧米並みに高めていきたい
喜多村:逆に調査によって印象が良くなるケースもあるんでしょうか?
藤木:もちろん、別アカウントを持っていても、それが趣味に特化したもので自分を磨いている方ですとか、実は熱心にボランティアをしていた方、面接の受け答えは上手ではなかったけれどSNSで文章力や発想力に優れていることが明らかになった人などは、それが採用の決め手になったりします。
喜多村:クライアントの方からはどんな反響がありますか?
藤木:やはり報告が具体的で、採用のミスマッチがなくなったという点を非常に喜んでいただいています。他社さんの類似サービスはクラウド上のものが多いのですが、弊社の場合、昔の婚前調査みたいに前職の関係者や交友関係、出身校の教師なども当たって泥臭く調査していますから。件数も10万件近く見てきましたので、スタッフの目も養われているんですよ。
喜多村:多くの人の裏の顔も見てきた藤木さんですが、これから日本を支え、企業を支えていく人財はどんな人だと思いますか?
藤木:今の若い世代を見ると、自分の若い頃に比べて仕事に対する欲がない人が多いですよね。日本を元気にするという点では、本気で就業先のことを「自分の会社」と言えるような人、会社に貢献しつつも「自分が成り上がるために、この会社を利用してやろう」くらい貪欲な人が増えてほしいなと思いますね。
喜多村:確かに、今はアジアの途上国のほうが活気がありますよね。最後に藤木さんの今後の展望についてお聞かせください。
藤木:9.11のテロ以降、外資系企業の間では入社後に採用者の国籍が違うといった問題が表面化し、採用時のフィルタリングに対する意識が高まりました。日本の企業はセキュリティソフトの導入意識は高いですが、人材に対するセキュリティ意識は欧米に比べ、まだ疎かになっているのが現状です。
せっかくコストと時間をかけて採用しても、入社後に何か問題を起こされたりしてしまってはムダになってしまいます。私たちは人材セキュリティ対策のリーディングカンパニーとして、日本企業の採用の「質」の向上に努めていきたいと思っています。
◆藤木仁(ふじき ひとし)
株式会社企業調査センター 代表取締役
株式会社企業調査センター
所在地:東京都千代田区飯田橋4-2-1 岩見ビル4F
URL:https://kigyou-cyousa-center.co.jp/
資料請求:https://kigyou-cyousa-center.co.jp/bg_lp/
◆喜多村豊(きたむら ゆたか)
一般社団法人 公開経営指導協会 理事長
株式会社ティーケートラックス 代表取締役社長
学校法人早稲田実業学校 評議員理事・校友会副会長
一般社団法人 公開経営指導協会
所在地:東京都中央区銀座2-10-18 東京都中小企業会館内
URL: https://www.jcinet.or.jp/