岡山県倉敷市を代表する観光地・美観地区周辺では、近年、外国人観光客の姿が目立つようになりました。
そうした中、倉敷名物として地元で親しまれてきた「ぶっかけうどん」にも、海外から熱い視線が注がれています。
倉敷市を中心にうどん店を展開する株式会社ふるいちでは、2026年2月に、美観地区に近い店舗の外国人客が全体の約20%に。
インタビューでは、台湾や中国から訪れる客が多く、口コミや検索サイトなどをきっかけに来店するケースが増えていることも明かされました。
なぜ今、寿司や天ぷらといった定番の日本食だけでなく、地域に根付いた「ぶっかけうどん」が外国人観光客から支持されているのでしょうか。
今回は、株式会社ふるいち エリアマネージャーの岡田将和さんに、外国人客が増えている背景やぶっかけうどんの魅力、インバウンドへの対応についてお話を伺いました。
倉敷で生まれ、長年親しまれてきた「ふるいち」のぶっかけうどん
岡山県倉敷市を中心に「倉敷うどん ぶっかけふるいち」などを展開する株式会社ふるいち。

その歴史は1948年にさかのぼり、創業当初はアイスキャンディーの販売から始まり、その後、饅頭やうどんなどへと事業を広げていったそうです。
現在では倉敷の名物として知られる「ぶっかけうどん」ですが、その誕生にはユニークなエピソードがあります。
創業者(現会長の父)が仕事を終えた後、趣味の麻雀を嗜みながらざるうどんを食べようとしたところ、つけ汁につけて食べるスタイルでは両手がふさがってしまうため「タレをうどんにかけて持ってきてほしい」と頼んだことがきっかけだったのだとか。
そこで、現在の会長である古市良一さんが、どんぶりに入れたうどんへざるうどんの汁をかけて提供。
片手でも食べやすいうえ、タレが麺に絡んでおいしかったことに着想を得て、昭和47~48年頃に商品化されたそう。
現在ではグランドメニューだけでも13種類のぶっかけうどんを展開しています。
また、ぶっかけうどんが地元で支持を広げていった背景には「手軽さ」もありました。
岡田さんによると、高度経済成長期には昼食に長い時間をかけられない人も多く、短時間でさっと食べられるぶっかけうどんは、当時の生活スタイルにもマッチしていたそう。
その後、口コミなどを通して倉敷市内で徐々に知られるようになり、昭和50年代には地域で急速に広まっていきました。
そんなふるいちのぶっかけうどんで特徴的なのが、麺とタレの組み合わせです。
岡田さんは麺について、

「当店のぶっかけうどんはコシもあるけれど、その中にソフト感があるんです。硬いというより、コシの中にモチモチ感があるという表現がいいかもしれません。」
と説明。
さらに、一般的なうどんとは茹で方にも違いがあり、ぶっかけうどん専用のタレとの相性を考えて麺を作っているそうです。
「ぶっかけうどんのタレに合うような麺を作っています。“タレありきの麺”ですね。当店では麺とタレ、両方が主役です。」
麺にタレをかけ、さらにさまざまな具材を組み合わせることで、それぞれ異なる味わいを楽しめるのがふるいちのぶっかけうどん。
半世紀以上にわたって倉敷で親しまれてきたこの地元の味が、今では外国人観光客からも注目を集めています。
外国人客が約20%に!倉敷の「ぶっかけうどん」が海外から注目
長年にわたって地元の人々に親しまれてきたふるいちのぶっかけうどんですが、近年は倉敷を訪れる外国人観光客からも注目を集めています。

倉敷駅近くにあり、美観地区からも徒歩圏内の「倉敷うどん ぶっかけふるいち 仲店」では、2026年2月に外国人観光客が来店客全体の約20%に到達。
開店前の行列では、約3人に1人が外国人という日もあるそうです。
インタビューでは、外国人客の中でも台湾や中国から訪れる人が多く、この2か国でインバウンド客の8割ほどを占めているとのこと。
岡田さんは、
「今はメインが台湾と中国です。インバウンドだけでいうと、その2か国で大体8割ぐらいあるのではないかと思います。台湾の方は最近、安定して来ていただいていますね。」
と話します。
外国人観光客の旅行スタイルにも変化が見られるそうで、近年は団体旅行だけでなく、スマートフォンを活用しながら自分たちで飲食店や観光スポットを探す個人旅行者も増加。
岡田さんによると、AIや翻訳機能の発達によって、ガイドがいなくてもスマートフォンで情報を調べながら旅行できる環境が整い、実際に来店する外国人客も事前にさまざまな情報を検索しているといいます。
特に、ふるいちを知るきっかけとして大きいのが、口コミや検索サイト。
「やっぱり口コミですね。誰かからの紹介か、もしくは検索サイト。これが当店に来店いただけるきっかけですね。」
と岡田さん。
SNSや検索サービスで「倉敷名物」「倉敷で食べるなら」といった情報を調べる中で、ふるいちのぶっかけうどんにたどり着く外国人観光客もいるようです。

「倉敷観光の途中で立ち寄り、とてもおいしかった。また来たい」「岡山のローカルうどん店として地域に根付いた良い店」といった口コミも寄せられているのだとか。
こうした反応から見えてくるのは、外国人観光客の関心が寿司や天ぷらといった広く知られた日本食だけでなく、その土地で地元の人が日常的に食べている“ローカルフード”にも広がっていること。
倉敷で長く愛されてきたぶっかけうどんだからこそ「倉敷に来たから食べてみたい」という新たな旅の楽しみとして、海外からの観光客にも支持され始めているのかもしれません。
「ウェルカム倉敷」の思いを胸にぶっかけうどんを旅の思い出の一つへ
外国人観光客の来店が増える中、ふるいちでは英語・韓国語・中国語に対応したメニューを用意するなど、海外から訪れた人でも注文しやすい環境づくりを進めています。
ふるいちのぶっかけうどんは、通常のだしを使ったうどんと比べてタレの味が濃いことから、外国語メニューでは濃いタレと薄いだしの違いが分かるように表記。
以前は味を薄めるためにお湯を求める外国人客もいたそうで、それぞれの好みに合わせて選びやすい工夫を取り入れているそう。
一方、岡田さんは今後の課題として、海外から訪れる人がふるいちのぶっかけうどんに何を期待しているのかを、さらに理解していく必要があると話します。
単に「おいしい」というだけでなく、ぶっかけうどんが倉敷で生まれた背景や、麺・タレを作る技術なども知ってもらうことで、食事そのものを一つの体験として楽しんでもらいたいという考えです。
そして、ふるいちが目指しているのは、ぶっかけうどんだけを全国や海外へ広めることではありません。
岡田さんは今後について、

「基本的な考え方は“ウェルカム倉敷”なんです。倉敷を見つけていただいて、倉敷に来ていただいて、倉敷で食べ物を楽しんでいただく。それが観光やインバウンドに対する、今の弊社の基本的な考え方です。」
と説明。
美観地区の歴史ある町並みを「見る」、大原美術館などで文化を「学ぶ」、そして倉敷で生まれたぶっかけうどんを「食べる」
岡田さんは、こうした複数の体験を通して倉敷そのものを楽しんでもらうことが大切だと考えています。
「“倉敷”という地名を使わせていただいているので、倉敷を訪れる方にも、食べ物という部分で貢献していければと思っています。」
と、地域への思いも語りました。
最後に、これから倉敷や岡山を訪れる人へ向けて岡田さんは、
「訪れた土地で食べるということはすごく大切なことであり、何よりも幸せなことだと思っています。倉敷に来たら、ぜひ倉敷で生まれたふるいちのぶっかけうどんを食べていただければと思います。」
とメッセージを寄せました。
地元で半世紀以上にわたって親しまれてきた味が、今では海を越えて訪れる人々にも広がり始めている倉敷のぶっかけうどん。
美観地区を訪れた際には、町並みや文化とともに、倉敷ならではの“食の思い出”として味わってみてはいかがでしょうか。
倉敷うどん ぶっかけふるいち:https://marubu.com/
公式Instagram:https://www.instagram.com/bukkakefuruichi/
